六軒島戦隊 うみねこセブン番外編

  〜蒼き戦士グレーテル物語〜


 第五章 ヘンゼルとグレーテル

 
  『三日後の深夜0時にワイルド・ウェスト・シューティングで待つ。 必ず右代宮縁寿が一人で来ること。』
 

 縁寿の元に届いたその手紙を読んだ天草は驚きを隠せなかった、何しろ縁寿の名前でのご指名である。 ファントムに正体がばれてしまったのではないかと不安になるが縁寿はそれを否定した。
 「……ファントムじゃなくそれ以外の誰かだと思うわ、最近のあたしはどっちかって言うとファントム以外の連中と縁があるみたいだしね?」
 何にしても妙な所へ呼び出すものだと思う、ワイルド・ウェスト・ヒーローと言えば縁寿にとっては思い出の場所である、無意識のうち自分の髪飾りを触ってしまっていた。
 「そう単純なもんですかねぇ……ま、どっちにしても百%罠でしょうけどね……」
 そんな所に縁寿を一人で行かすわけにはいかないのだが、そうも出来ないのは手紙の続きを読んだからだ。
 「……この指示に従わなかった場合は仕掛けた爆弾を使いファンタジア・エンタープライズ本社を爆破するですか……何でファンタジアなんですかね?」
 「あたしの正体を知ってるってことは確実にセブンのことも知ってるわ、右代宮グループと縁があり、かつ事情を説明出来ないファンタジアなら人質として最適ね」
 成程と天草は納得した。 例えば右代宮本家だったりその関連施設なら住人を避難させたり爆弾の捜索も可能だろうがセブンの事を説明出来ないファンタジアではそうもいかない。
 「……つまり行くしかないってことよ天草、大丈夫よ、あたしは死なないから……」
 「しかし……」
 何とかして爆弾を発見し解除できないかとその手段を考えてみるが天草ではどうしようもなかった、そもそも爆弾とは言っているがそれが人間の使う物と同じとも限らないのである。
 「……とにかく金蔵さんに相談してみましょうや、決めるのはそれからでも遅くはないです」
 きっと何か手があるはずだと、そう祈るような気持ちになる天草。 護衛としての任務を任されながら実際に戦闘となっても大した戦力となれず、今もまた何も出来ず金蔵を頼るしかないというのが歯がゆいと思うのだった。
 「……せめてファンタジアの社員や警備システムに見咎められずに偵察できる事が出来れば……」
 「天草……そんなこと出来るわけ…………」
 縁寿がそう言いかけた時二人の顔がはっとなった、知り合いに一人普通の人間には見えない女の子がいるのだ。
 「「時間泥棒の魔女エターナっ!!!!」」


 ファンタジア・エンタープライズの玄関にも当然受付はいる、しかしこの日は一人の少女が堂々と目の前を通過しても誰も気が付かなかった。
 「……侵入成功〜♪ これよりミッションを開始します〜♪」
 別に通信機があるわけでもないのにノリでそう言うエターナだった、広い会社ではあるがそんなことを気にもせずトコトコと手当たりしだいに歩き回る。 昼休みが終わったばかりでまだ日も高い時間帯であったから社員はどこか気だるそうである、そんな人間達を見てエターナは人間の大人って大変なんだなと思う。
 「……それにしても爆弾って言ってもそれらしいものはないわねぇ……やっぱ十夜に頼んだ方がいいかもね……」
 縁寿の頼みで引き受けはしたがエターナだって素人であるから爆弾なんて見つけられるとは思えない。 そんな事を考えながら歩いているといつの間にか屋上に来ていた、そして引き返そうとすると目の前に突然人影が立ち塞がる。
 「……貴女はここで何をしているのですか?」
 エターナはぎょっとなってその人物を見上げる、長い銀髪に黒い帽子を被ったその女性は間違いなく魔女だった。 エターナはしばらくその顔をしげしげと眺めやがて口を開く。
 「……おばちゃん、誰?」
 「……なっ!!? お、おおおお……おばちゃんっ!!!?」
 その一言にまるで頭に岩でも落下してきたかのようにが〜ん!となる魔女――ワルギリアだった。 しかしすぐに咳払いし気を取り直す。
 「……貴女は確かエターナですね? 何でこんなところにいるのですか?」
 「え? おばちゃんはあたしの事を知ってるの?」
 「……おばちゃんではなくワルギリアです! それと貴女の事はリリーからも聞いていますし最近我らファントムに敵対する者としてよく知っていますよ?」
 リリーの知り合いという事もだがファントムという単語が出てきた事にエターナは驚く、そして改めてワルギリアの顔を見つめた。
 「……ファントムってことは悪者だよね? おばちゃんはそうは見えないけどなぁ……?」
 「だからおばちゃんはやめなさいって……とにくかくそうです、私は悪者なのですよ? だから少しは警戒しなさい」
 ファントムと名乗ってなお無防備にきょとんとしているエターナに呆れてついそんな事を言ってしまう、そしてそんな自分に内心で苦笑してしまうワルギリア。
 「……あ、でもファントムって事はここを爆破しようとしてるのっておばちゃんなの?」
 「だからおばちゃ……は? 爆破!?」
 「ありゃ? 違うの?」
 エターナは自分がここに来た理由を正直に話す、もちろん縁寿達の事は伏せてだ。 縁寿達うみねこセブンの事は誰にも話さないと約束してあるから、エターナは約束は絶対に守るのである。
 「……そんな事が……まさか…?」
 それを聞いたワルギリアは驚きを隠せない、この場を逃れるための嘘の可能性もあるがリリーから聞いた話ではエターナは気まぐれ猫であっても約束は絶対守り嘘を吐くような事はないと言う。
 何より手紙の差出人としてエターナが知ってるはずもない『ヘンゼル』の名を出されては信じるしかない。
 そうとなればその爆弾とやらは探さねばならない、それはいいがそうなると問題はエターナをどうするかである。 幸いファントムとファンタジアの関係は気が付いてなさそうだ、しかしエターナは仮にもセブンと協力している敵なのだからこのまま帰していいものかである。
 (……本当に悪者ならこの子を捕えて拷問でもしセブンの情報を白状させるのでしょうが……)
 しかし友人であり事象管理結社という組織の幹部でもあるリリーを敵に回したくないという打算抜きでもそれは出来そうになかった、そういうお人好しな性格を呪いたくなる。 だからこの言葉は半ば愚痴である。
 「……まったく、どうして貴女は彼らに……セブンに協力するのです?」
 「ん? だって、えん……じゃなくてグレーテルやゴートは友達だもん♪」
 エターナは何の迷いもなくそう答えて見せたのだった。

 間もなく閉園時間が迫っていた、金蔵と天草は指令室で難しい顔をしていた。
 「……結局何の手だてもないままお嬢は今夜対決……」
 「……希望があるとすればエターナとやらが接触したというファントムのワルギリアという魔女か……」
 ファントムの幹部であるというその魔女を信用していいものかという疑念はある、しかしエターナはワルギリアは爆弾を探し対処すると約束し、そして魔女は絶対に約束は破らないと力説していたという。
 「……しかし所詮は子供との口約束ですよ金蔵さん?」
 しかしその子供は縁寿との約束を守りワルギリアに対しセブンの事は話さなかった、そしてワルギリアもまたエターナから無理矢理には聞き出そうとはしなかったのも事実だ。 ならばワルギリアという魔女は話がまったく分からない人物でもないのかも知れないと金蔵は思う。
 「……お館様、手配は完了しました」
 そこへ源次がやってくる、縁寿の戦いに巻き込まれないよう今日は一般の職員が残業をしないように調整をしていたのだ。 金蔵はご苦労だったなと彼を労う。
 「……しかし子供らが命懸けの戦いに身を投じ魔女ですら無用の犠牲を出さぬよう動いておるというのに儂ら人間の大人はそれを座して眺めるのみとはな……」
 その金蔵に源次も天草も言葉がなく沈黙するのみだった。
  

 時計の針は間もなく真上で重なろうとしていた、縁寿は今は窓から入る月明かりのみという暗いワイルド・ウェスト・シューティングの部屋に一人変身もせず佇んでいた。
 不意打ちもありえるとは考えたがこちらの正体は知られているのだ、その気があるならとっくに自宅で寝込みを襲うとかしてるだろう。 だから敢えて堂々と待つことにした、ヘンゼルという者の正体を見極めたいという心理もある、変身していない自分にいきなり襲いかかる事もないだろう。
 「……時間ね」
 「……ああ」
 不意に聞こえた男の声にぎょっとなったのはその声を縁寿は知っていたからだ、忘れようとしたって忘れない大事な家族の声……兄である右代宮戦人のものだからだ。 しかしここにこの世界の戦人が来るはずはない。
 「……何の冗談? また偽物なの?」
 「……ん? ああ、ババルウの件もあるしそれを疑うのも当然か……だがまだその髪飾りを付けているなら俺が何故ここに呼んだか分かるだろ? 昔俺が取ってやったその子供っぽい髪飾りをな?」
 「な……何をっ!!?」
 「あの時の俺はまだお前のことを本当に可愛い妹だと思っていた、俺自身も何も知らない馬鹿なガキだった……」
 縁寿はただ困惑するだけだ、いったい戦人の姿をしたこの敵は何を言ってるのだろう?……それ以外に思考が働かない。
 「……俺の三番目の母親、右代宮明日夢は霧江を出し抜き親父と結婚するためだけに俺を『拾った』……二番目の母親右代宮夏妃に崖から落とされ死にかけた俺をな……そして最初の、生みの親なんて顔も知らない……霧江に……母親に愛されたお前と違ってな、右代宮縁寿っっっ!!!!!」
 兄の顔に恐ろしい程の憎悪の籠った目で睨まれ身体がすくんでしまう、そして理性ではまだ受け入れられないが本能ではすでにこの男が何者かを理解し始めていた。
 「……嘘…本当に兄さん……なの?」
 「ああ、お前の目の前でエヴァに殺された正真正銘のだ……だが今の俺はヘンゼルだ、だからお前を殺す!!」
 戦人――ヘンゼルの両腕にそれぞれ紅と蒼い光剣が出現した。
 「さあ変身しろ縁寿っ!! そして戦い俺に殺されるがいいっっっ!!!!!」
 「い、嫌よ……何で兄さんと……こんな…いやぁぁぁああああああああああああっっっ!!!!!!」
 怯えた顔で絶叫し数歩後座ずる縁寿、そんな彼女にヘンゼルは失望したような目を向けた。
 「……ふん! ならお前が戦わねばファンタジアの爆弾を爆発させると言ったら? あれだけの企業であれば深夜であっても仕事をしている者は多いだろうな?」
 「や……やめてよっ!! そんなのやめてよお兄ちゃんっ!!!!」
 「ならば俺と戦えっ!! 仮にも俺の【コア】を使っているのだ、無抵抗で何もせぬまま殺すなどつまらないからなっ!!」
 その言葉に縁寿ははっとなる。 そう、自分は今戦人の【コア】を受け継いでいるのだからこのまま何もせず死ぬわけのはいかない。 それにきっと戦人を正気に戻す方法はあるはずだと自分を奮い立たせる。
 「……分かったわ、やってあげる! コアパワー・チャージオン!! チェンジブルーっ!!!」
 縁寿の身体が光輝き、蒼いバトルスーツが装着される。 それを見たヘンゼルは満足気に微笑んでいた。
 「……強くなったな縁寿……それでいい、ならばいくぞ【真実の双剣(トゥルー・ツインソード)】!!!
 「……?…とにかく絶対に兄さんを救ってみせるわ! 【天使の双刃(エンジェリック・ツインブレード)】!!!!」
 闇の中に光るそれぞれの刃、そしてヘンゼル対グレーテルの対決は始まった……。

 



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  〜蒼き戦士グレーテル物語〜


 第五章 ヘンゼルとグレーテル

 
 ヘンゼルの振った蒼い剣をかわしたグレーテルは反射的に振おうとした【天使の双刃】を止めた、そこへ今度は紅い剣が降り降ろされるが後ろへ跳ぶ事で回避するグレーテル。
 「貴様、何故攻撃してこないっ!?」
 苛立った声で言うヘンゼルをグレーテルは睨み返すのが精いっぱいだ、【天使の双刃】の力は強力なため迂闊に攻撃してはヘンゼルの、戦人の命に危険を及ぼしかねない。 それ以前に戦人に刃を向けるという行為自体に抵抗がある。
 「それともこのまま俺に殺される気かぁっ!?」
 「何で……何でお兄ちゃんが敵なのよっ!!?」
 「……こうしてお前を殺そうとしているからだろうっ!!」
 その言葉通りヘンゼルの剣には迷いも躊躇もなくグレーテルの命を奪おうとしている、それが分かっていてもグレーテルは積極的な攻撃に出る事が出来ない。
 「だいたいさっきの話をもう忘れたか? 俺はお前の兄でも何でもない赤の他人だっ!!」
 「違うっ!! お兄ちゃんはお兄ちゃんなのよぉっ!!!! だから……こんなのやめようよぉっっっ!!!!」
 必死に懇願するグレーテルだったがヘンゼルは容赦なく打ち込みを続け、防戦一方のグレーテルは徐々に追い詰められていく。
 「違う!! 俺はヘンゼル、あの方に仕える戦士だっ!!!」
 「あの方?……っ!!!?」
 その時グレーテルの背に壁がドンと当る。 
 「だから敵である者はすべて滅ぼす、お前も戦士ならばそうするべきだろうっ!?」
 「違うわっ! 戦士は大事なものを守るために戦うのよ!! それを忘れたから未来世界は崩壊した!!!」
 今なら分かる、確かに当初は皆大事な誰かを守りたいという想いから武器をとったにだろう。 しかしそれがやがて『そのためには戦いに勝ちファントムを滅ぼすしかない』という理論になってしまい無益な殲滅戦になってしまった。
 「あたしは相手を滅ぼすためには戦わないっ!!! 絶対にっっっ!!!!!」
 叫ぶと同時にグレーテルは出口へと向かい駆け出した、ヘンゼルがそれを許したのは彼女が逃げるつもりではなく、この場での戦闘は不利と判断したからだと分かっていたからだ。


 「……うん、分かった。 ありがとうねおばちゃん♪」
 『おばちゃんじゃなくワルギリアですっ!!!!』
 エターナが持つ携帯電話は彼女の物ではなくワルギリアから連絡用に預かったものだ、もしこれがセブン側の手に渡れば持ち主が特定されファントムの正体がバレてしまう危険はあったがワルギリアはエターナを信用し預けた。
 『……約束は覚えていますねエターナ?』
 「うん、用がすんだらこの電話はぶっ壊しちゃっていいんでしょう? それにグレーテル達にもこのことは言ってないよ?」
 エターナのまったく迷いのない声にワルギリアは安堵すると同時呆れもする。 そして呆れているのはエターナの隣にいるゴートも同じだった。
 エターナは物事を深く考えずにとにかく自分の直感だけで行動したがる、例えば罠かも知れないと疑う事もなくワルギリアから携帯を受け取る行為はゴートからみれば危うすぎる。
 しかし結果だけ見ればこうして良い方向に向かっているのだから呆れたくもなろうというものだ。
 『……エターナ、この一件が終わったら貴女はもう手を引きなさい。 本当にファントムの敵になれば命の保証はしませんよ?』
 「大丈夫だよ〜♪ おばちゃんもグレーテル達も良い人だしきっと仲良くなる方法もあるよ? 何かおばちゃんて嫌々悪い事してる感じだしね」
 最後の言葉にワルギリアはぎょっとなる。 たかが子供の直感と言えばそれまでだが、その言葉は確信をついていた。
 『…………いいえ、私は望んで悪い事をしているのですよ……あの子のために……ですからエターナ、次に会った時は覚悟をしていて下さいね?』
 そう言って電話は切られた、その最後の言葉を発するワルギリアの声をエターナは辛そうだなと感じていた。
 

 グレーテルとヘンゼルの戦いは『キャッスル・ファンタジア』近くの通路へ移っていたがグレーテルが防戦一方という状況は変わっていない。
 「誰かを守ると言うなら尚更敵を討つのをためらってどうするかっ!?」
 「あたしが守りたいのはお兄ちゃん達なのよっ!! そのお兄ちゃんをどうして討てるのよっ!!?」
 「俺がお前を殺そうとしているからだろ! 俺はお前が……いや、お前達が憎いから殺す! そしてお前達が死にたくないなら俺を殺せばいい、それだけの事だろうがっ!!!!」
 その言葉通りに憎悪を込めて【真実の双剣】が振われる、対する【天使の双刃】はあくまでヘンゼルの攻撃をガードするのに使われるのみ、このままではやられるのも時間の問題だとグレーテルは思うがそれでも反撃に転じられない。
 「そもそもお前が守ろうとしている『家族』などただのまやかしだと分からないのかっ!!!」
 「そんなはずないわっ!!!!」
 ファントムが攻めてくる以前の平和な日常の中にあったグレーテルの家族は、温かく幸せなものだった。 それをどうしてまやかしと思えるだろう、それを大事な家族である兄の口から否定されるのは辛かった。
 「!!!!?」
 防御のタイミングがワンテンポ遅れて蒼い剣の切っ先がグレーテルの喉元に突き付けられた、死を覚悟し動きを止めたグレーテルだったがその切っ先が彼女の喉を貫く事はなかった。
 「……【スナイパー・イーグル】、そんな玩具では俺は殺せないぞ? 天草十三……」
 「……だが、お嬢が逃げる時間を稼ぐくらいならな?」
 ヘンゼルの背後数十メートルの位置に天草も姿が見えた、その事実にグレーテルは驚く。
 「ファンタジアの爆弾は解除できました! 後は任せてお嬢は逃げてくださいやっ!!!」
 それはつまりファントムがファンタジアを救ったということだ、向こうにも何か事情があっただろうというのは予想出来るがそれでもグレーテルにとっては驚く事である。 その時眩しい閃光がグレーテル達の上空を通過した。
 「あ〜〜〜〜!? また外れた〜〜〜〜〜!!!!」
 「……危ないから君は下がっていなさいエターナ!」
 【スター・バスター】が外れて悔しがるエターナとそしてゴートだ、言いながらエターナを庇うようにゴートは彼女の前に立つとグレーテルに向かい言う。
 「君もここは逃げるんだ、彼を相手にはとても戦えまいっ!!」
 エターナの母親である魔女、久遠からこの戦人を救う事は不可能だと聞いている。 ならばその命を奪うという行為をグレーテルにさせるわけにも、そんな光景をエターナに見せるわけにもいかない。
 「忌々しい! また邪魔をするか、仮面ランナー・ゴートめっ!!」
 久遠と一緒だったとはいえ前回戦った時は何とか退けたもののかなりの深手を負わされた相手である、エターナと天草は戦力外としてもグレーテルと共闘されると勝算は低いと言わざるを得なかった。
 「あんた! えん……グレーテルのお兄ちゃんなんでしょう!!? お兄ちゃんが妹を襲うとか最低だと思わないのっ!!?」
 「黙れエターナっ!!! あれだけ母親に愛されている貴様に何が分かる!!? 母親にことごとく裏切られてきた俺の気持ちなど分かるのかよぉっ!!!!?」
 叫びながらエターナを睨むヘンゼルの目はゴートでさせ一瞬寒気を覚える程だった、流石のエターナも怯えた顔で黙り込んでしまう。 しかしすぐに怒った顔になり両手をブンブンと振り回すと言い返す。
 「あんたの事情なんて知るかぁぁあああああっ!!!! だいたい縁寿があんたに何かしたの? 縁寿はあんたの事が大好きなの、大事なの。 それでいいじゃないでしょうがぁぁぁああああああああっ!!!!」
 どうやら本気で頭にきているようでグレーテルでなく本名の縁寿で呼んでる事も気が付いていない。 ヘンゼルと母親の間に何があろがそんな事は縁寿には関係なく、エターナにとっては単なる八つ当たりにしか見えないのだ。
 「黙れぇぇぇえええええええええええええっっっ!!!!!!!」
 エターナに斬りかかるヘンゼルだったが割って入ったゴートに蹴り飛ばされる。
 「お前の相手は私だ!」
 「お嬢も早く下がってっ!!」
 天草も走ってグレーテルの前に立つ、【スナイパー・イーグル】を撃たないのは限られたエネルギーを無駄にしないためであったが、グレーテルの前でヘンゼルを撃つという行為に僅かに抵抗があるためでもあった。
 「……いいだろう、ならば俺も切り札を使おう。 この【ダーク・コア】の力を全開にする……」
 「何だと!?」
 驚いて声を上げたのはゴートである、【ダーク・コア】とは死んだヘンゼルの身体を蘇らせるために彼の体内に埋め込まれていると久遠から聞いた。 この【ダーク・コア】こそがヘンゼルこと戦人を狂わす元凶であり。 彼を救うにはこれを破壊するしかないが、それは戦人の死を意味するのである。 
 「ダーク・コアパワー・フルオープンっ!!!」
 ヘンゼルの身体から黒く禍々しい光が放たれ彼の身体を包む、そしてその光はやがて彼の身体を覆う鎧へとその姿を変えた。 いや、鎧と言うより外殻と言う方がいいかも知れない、その姿はさながら書物などで見る悪魔の様でありその背には爬虫類を思わせる翼まであった。
 そして彼の胸の所にある黒い水晶の様なものが【ダーク・コア】なのだろう、力を全開にする代わりに心臓部をむき出しにしてしまうから久遠戦ではこの形態をとらなかったのだ。
 「……嘘……お兄ちゃん……?」
 兄の変わり果てた姿にグレーテルは茫然となる。
 「さしずめ『ダーク・ヘンゼル』と言ったところか? さあ、これで決着をつけてやろうグレーテル!!!!」





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  〜蒼き戦士グレーテル物語〜


 第五章 ヘンゼルとグレーテル


 ヘンゼルとグレーテルの戦いをフェザリーヌは魔法を使い観戦していた、戦い自体は面白い見世物ではあったがある疑問が浮かぶ。
 「……ヘンゼルの様子が妙だな? 『19男』と【ダーク・コア】に取り込まれたはずの『戦人』の意識が戻りつつあるとでもいうのか?」 
 まあ、それはそれで面白いと思ったところへラムダデルタが慌てた様子で転位して来た、そしてフェザリーヌはその報告を聞いて顔色を変えた。
 「何!? あのエターナルが干渉してきただと!!?」
 
 
 ダーク・ヘンゼルがその羽をはばたかせると飛び上がる、ゴートがさせんとばかりに蹴り技を仕掛けるが僅かな差で空振りに終わる。 ならばと天草が【スナイパー・イーグル】の引き金を引くがダーク・ヘンゼルは鳥の様にしなやかな動きで蒼いビームも回避してみせる。
 「遅い!……む!?」
 エターナの放った【スター・バスター】の閃光がダーク・ヘンゼルの足元を通過する。
 「あ〜〜〜〜避けんじゃないわよ〜〜〜〜〜!!!!! ええい! もっかい【スター・バスター】!!!!」
 ちなみにダーク・ヘンゼルは避けてはいないが【スター・バスター】は命中しない、しかし黒山羊程度なら一撃で黒焦げの威力を持つ魔法を連射してくる事には少しひやりとする。
 「……ノーコンだが何という魔力量だ、もしこのままエターナが成長すれば大きな脅威となるやも知れん……」
 言いながら手に銃を出現させる、もちろん唯の銃ではなく魔力を弾丸として発射する物だ。 【スター・バスター】と【スナイパー・イーグル】のビームを回避しながらその銃――【ブラック・イーグル】のトリガーを引く、ハンドガンにも関わらず【スナイパー・イーグル】の数倍と思われる黒いビームが発射されエターナを狙った。
 「うげぇっ!!?」
 「くっ!! 【天使の守護領域】!!」
 グレーテルがエターナの前に跳び出しフィールドを展開し黒いビームを飛散させる、そして【飛翔刃】を放とうとしたがその手を止めてしまう、姿形は異形となっても兄を攻撃するのは躊躇ってしまう。
 「……くっ! 空中にいては手の出しようもないか!?」
 ゴートが舌打ちをしつつ言う、彼自身には空中の敵を攻撃する技がなく、グレーテルの【飛翔刃】の射程もそう長くはない、【スナイパー・イーグル】の威力ではダーク・ヘンゼルに致命傷を与えるのは難しくエターナの魔法は威力はあってもノーコンである。
 「こんにゃろ〜〜〜〜!! 降りてこ〜〜〜〜いっ!!!!」
 五発目の【スター・バスター】を外したエターナが悔しそうに腕をブンブンと振る、もっとも命中してもダーク・ヘンゼルに魔法は効かないのだが……。
 「……むっ!? ならば何故【スナイパー・イーグル】を避ける必要がある!?」
 別に当った所で仔猫に噛まれた程も効かないのだからいちいち回避する必要はないはずだ、それだけではなく【スター・バスター】に対しても若干警戒している様にゴートには見えていた。 その思考が中断したのは【ブラック・イーグル】のビームがゴートを狙ったためである、彼はそれを何とか回避して見せる。
 (……そうか! あの黒い水晶の様な部分には魔法が効くのか!?)
 確証はないが戦士としての勘と経験がそう告げていた、しかし攻撃が届かない現状では試すことさえできない。
 「まったくちょこまかと……だがいつまでもつかなっ!!」
 反撃の手段もなく上空からの攻撃を警戒し続けることは予想以上に精神を消耗する、ダーク・ヘンゼルが攻撃の対象を散らしているから尚更だ、自分がどのタイミングで攻撃されるか分らないのである。
 「このままで皆死ぬぞ! それでもお前は何もしないのかグレーテルっ!!?」
 「やめてよっ!!! あたしはお兄ちゃんも天草やゴートやエターナも失いたくないのぉっ!!!!!」
 「まだそんな事を言うのかっ!! お前の大事なものを守るには俺を殺すしかないというのがまだ分からんのかっ!!?」
 「分かるわけないでしょう!!! あたしはお兄ちゃんも守りたいのよ!? 死んじゃったと思ってた……でも今もこうして生きてるんでしょう? そのお兄ちゃんをあたしがどうしてっ!!!?」
 「そんなに仲間といたいなら全員まとめてあの世へ送ってやる!!」
 ダーク・ヘンゼルの声と共に胸にある【ダーク・コア】が黒く不気味に発光し出す、もちろん唯光っているのではなく【ダーク・コア】から【ブラック・イーグル】に禍々しい魔力が送り込まれているがグレーテルには分かった。
 「……【ダークネス・ブラスター】、この遊園地を半壊させるくらいの出力はある、お前が何もしないと言うのならこれで終りだ!!」
 グレーテルは愕然となる、それが嘘やはったりでないのはダーク・ヘンゼルの放つ魔力量で分かる。 しかしそれ以上に自分を殺すためにここまでするという事がショックだった、もう何かしようという気にもならずその場にへたり込んでしまう。
 天草とゴートが逃げろと叫ぶがもうどうでもいいことだった、しかし彼らを巻き込んでしまった事は本当に申し訳ないと思う。 その時ふと思いついてエターナを見る、戦士であるゴートや護衛の天草と違い彼女は本当に無関係の存在だったからこんな事になってしまい恐怖に泣き叫びながら自分を恨んでいるかも知れないと思っていた、しかし……。
 「……何のつもりだ?」
 「決ってるでしょう、そのダークネス何たらをこのピコハンで打ち返してやるのよ!!」
 エターナはピコハンを構えてグレーテルの前に立っていた、当たり前だがそんな無茶な事は出来るはずもない。 一人だけ逃げるという選択肢はエターナの頭にはない、自分もグレーテル達も死なないためには打ち返すしかないという単純な思いつきでしかない。
 そしてそんなエターナをあざ笑うかのような笑みを浮かべたダーク・ヘンゼルの指が【ブラック・イーグル】のトリガー引いた……。


 グレーテルが気がつくとと暗闇の中に浮いていた、ここがあの世なのだろうかとぼーっとする意識の中で思う。
 「……グレーテル……いや、縁寿よ。 お主はまだ死んではいないし、死んではいかんぞ!」
 突然聞こえた女の声にグレーテルの意識がはっきりする、そして目の前にいるそいつに目を見開いて驚く。
 「ベアトリーチェ!?」
 「うむ、妾はベアトリーチェ……お主のいた未来のな」
 「何であんたが!? いえ、そんなのどうでもいいわ、今ここであんたを倒してあげる!!」
 グレーテルが【天使の双刃】を出してもベアトリーチェは動じない、ただ静かな口調で語る。
 「……もう妾を殺してもどうにもならぬ、未来の世界はすでに滅んだのだ……人も魔女もな、いったい妾達は何をしてきたのか……」
 「あんた達が攻めてきたからでしょうが!! ふざけないでよっっっ!!!!」
 グレーテルはある限りの怒りをぶつける、ファントムが攻めてさせ来なければ家族が死ぬ事もこうして兄と戦わされ天草達が危険な目に合う事もないはずなのだ。 この目の前にいる魔女がすべての元凶であるのに何を言っているんだと。
 「……妾は、いや……妾も守りたかったのだよ大事な人達をな、しかし結果は先程言った通り……何と言うザマよな……」
 グレーテルは絶句した、この寂しそうに自虐的な顔をしたのが諸悪の根源と思ってきたベアトリーチェなのだろうかと疑う。 しかしエターナ達を見ればベアトリーチェもまたこうであっても不思議はないのかも知れない、魔女とて異形の魔物ではないのだから。
 「縁寿よ、すでに確定してしまった未来は変えられぬ……しかし新たな可能性の未来を創る事は出来るのだ」
 「……どういうこと?」
 「死者は決して蘇らぬが……戦人が生きている未来を創る事は出来るということだ」
 「!!?……それって結局兄さんを殺せって事!!?」
 「ならばここでチェス盤をひっくり返してみるが良い、戦人はお前を殺し……家族を憎むような男であるのか?」
 そんなはずはない、兄はいつも自分を可愛がってくれたのだ。 
 「はっ!? お兄ちゃんは自分で望んでいない事をしている……いえ、させらているのね!?」
 ベアトは黙って頷く。
 「戦人を操っているのはあの【ダーク・コア】と『19男』と呼ばれる別の可能性の『戦人』の人格、しかし【ダーク・コア】の破壊はあやつの死を意味する……分かるな?」
 今度はグレーテルが頷く、もし自分が同じ立場になれば何を思うか……その答えはひとつしかない。
 「別世界の亡霊に未来を潰させるわけにはいかんのだ、そして『この世界』で過ちを繰り返させるわけには絶対にいかん!」
 そう言うとベアトリーチェは手を差し出す、その意味が分からず怪訝な顔になるグレーテル。
 「妾も戦人を助けたい、しかし妾はそっちに行く事が出来ぬ……だから妾はそなたの【コア】と同化し力となりたい」
 「同化? あんたはどうなるのよ!?」
 「……誰もおらぬ未来で生きているのはもう疲れた……だからせめて可能性のために戦いたいのだよ」
 ベアトリーチェの瞳には決意と覚悟が見て取れる、ならばそれを拒む理由はなかった。 ベアトリーチェに対する恨みを忘れす事は出来ないだろうが、それに拘り別の可能性を消すわけにはいかない。
 「ええ、いきましょうベアトリーチェ!」
 グレーテルがベアトリーチェの手を取った瞬間に眩しい閃光が二人を包むと瞬時にこの暗闇の世界から消失させた。
 二人の魔女が消えてからしばらくし別の魔女が現れた、二十歳くらいで銀髪の魔女――永遠(とわ)の魔女エターナルは祈るように呟く。
 「……がんばってねベアト……それに縁寿」



 すべてを飲み込むかのような【ダークネス・ブラスター】の黒い光が突然見えない壁に阻まれ飛散した。
 「な、何だと!?」
 「……【天使の守護領域】広域展開!! みんなは絶対殺させないわダーク・ヘンゼル!!!」
 誰にも何が起こったのか分からない、先程まで絶望的な顔だったグレーテルに突然覇気が戻り【天使の守護領域】を展開した、しかもこれまででは到底考えられない程の出力で広域にである。
 「くっ! だがようやくやる気になったか!?」
 「ええ! この世界の可能性……未来を消すわけにはいかないもの……【天使の光翼(エンジェリック・ウイング)】!!!!」
 グレーテルの背に光の翼が現れた、そして一度それをはばたかせると彼女の身体が浮かび上がった。 その光景にダーク・ヘンゼルだけでなく天草やゴートも信じられず茫然となる。
 「……お嬢いったい……?」
 「縁寿の中に誰かいる……」
 小さく呟いたのはエターナだ、根拠も何もないがただそんな気がした。
 「お前のその力は……いや、やる気になったと言うなら何も言うまい、【真実の双剣】!!!!」
 【ダーク・イーグル】を投げ捨てると再び紅と蒼の剣を出現させる、その表情は未知数な力を不気味に思いながらも僅かに歓喜が浮かんでいる。 その理由はやっと強敵と戦えるという戦士のそれとは違うとグレーテルには思えた。
 「いくわ、【無限天使の双刃(インフィニットエンジェル・ツインブレード)】!!!!」
 グレーテルの両腕に出現した新たな刃は【天使の双刃】より一回り大きく、そして金色の光を放っていたのだった……。  


     永遠の魔女エターナル

とある理由で神クラスの魔女になったエターナ。
そのせいで仲間達のいる世界にいられなくなりカケラ世界を放浪するようになる、そしてあるカケラでエターナと仲間達が共にいられる世界を創ろうとする。
そしてその望みが叶った後は『庭園物語のカケラ』に落ち着きのんびりと暮している。





六軒島戦隊 うみねこセブン番外編

  〜蒼き戦士グレーテル物語〜


 第五章 ヘンゼルとグレーテル


 【無限天使の双刃】と【真実の双剣】がぶつかり合う、双方空中を自在に動き回り激しくその剣を打ち込んでいく。
 「初めての空中戦でこれだけの動きを見せるとは!?」
 「今のあたしは一人じゃない! 天草、ゴート、エターナ……そしてベアトリーチェっ!!!」
 「ベアトリーチェ!? やはりベアトリーチェだったのかっ!?」
 先程から僅かだが感じていた魔力の波動には覚えがあった、しかしそのベアトリーチェがグレーテルに力を貸すという奇跡などどうすれば起こりえるのかが分からない。
 「あたしは兄さんを殺したくはない! でも未来はもっと殺したくないのっ!!!!」
 「未来だと?」
 「人も魔女滅ぶ絶望の未来なんかいらない! ううん、この世界の『あたし』や兄さんにそんな未来は見せないわ!!!」
 黄金の刃がダーク・ヘンゼルの右肩を掠める、グレーテルのこれまでの戦闘データは知っているが今の彼女はそれとは格段に強くなっている。 それは単にベアトリーチェが力を貸したというのではないと気がつく。
 「【コア】とベアトリーチェが同化したと言うのか!?」
それは【コア】の出力が上がるというだけではない、【コア】を介しグレーテルとベアトリーチェの精神がリンクしグレーテルは自身だけでなくベアトリーチェの知識や経験を使って戦っていると言う事になる、 
 「さかしい事を……エンジェ・ベアトリーチェだとでも言うかっ!?」 
 「あたしもベアトリーチェも兄さんを殺すのは辛い……でもいいように邪悪に利用される兄さんを見るのはもっとつらい!!」
 グレーテルの狙いは【ダーク・コア】の一点のみで必要以上に戦人を傷つける気はなかった、しかし狙いが明確だからこそダーク・ヘンゼルもまた攻撃を凌げているのも事実だった。
 「ならお前はどうする!? 仮に我らを倒したとしてこの世界にお前の居場所があると思うのかっ!!?」
 「そんな事元から承知よ! どうせ元の世界にいればいずれ死んでいたんだから、兄さん達が幸せな未来さえ創れたら後悔はないわ!!!!」
 「健気な事を言う!」
 グレーテルの横なぎの攻撃をかわすと彼女の胴に蹴りを入れた、そしてその反動を利用し一旦距離をとる。 グレーテルは小さく呻きつつも何とか堪えそれでバランスを崩すことはなかったが追撃もかけられなかった。
 

 その戦いを地上から見守る天草達は、グレーテルの突然のパワーアップぶりに唖然とするしかない。
 「……こいつはすげぇ……」
 「これならダーク・ヘンゼルにも勝てるか……」
 グレテールはただ魔力が上がっただけではない、その力を持て余すことなく使いこなしている。 今の彼女ならロノウェやワルギリアといったファントム幹部クラスとさえ十分に戦えるのではないというのがゴートの見立てだった。
 「しかしグレーテルにヘンゼルが倒せるのか!?」
 大人二人がやや興奮した顔で戦いを見守っていたから二人の脇でエターナが一人悲しいそうな瞳でグレーテルを見ていた事に気がつかなかった。
 

 両者の距離はおよそ十メートル程だったが彼女らにとっては瞬時に跳びこめる距離である、油断なく攻撃のタイミングを計る。
 「……だが、それは俺も同じだな。 俺も復讐させ果たせれば滅んだとしても構わないしな、正直人間も魔女もどうなろうが知った事ではない」
 そのダーク・ヘンゼルにグレーテルは首を横に振った。
 「それは違うわ、確かに最悪の覚悟はしてる……でもあたしは自分の幸せも諦めていない、じゃないとエターナにまたピコハンで叩かれちゃうしね」
 「何?」
 「エターナだけじゃない、天草もゴートもあたしが死んだら悲しいって言ってくれた……だからあたしは簡単には死ねない、不幸にはなれない!!」
 グレーテルは突撃をかけダーク・ヘンゼルはそれを迎え撃つ、双方のブレードがぶつかり合いつばぜり合いになった。 しかし僅かだが【無限天使の双刃】が押し込みつつある。
 「この俺が力負けする!?」
 「あたしだけじゃない、ベアトリーチェの想いもこの双刃に宿っているの!!」
 「くっ! ベアトリーチェの想いだと!?」
 「ベアトリーチェは何かを奪いたかったわけでも壊したかったわけでも、ましてや誰かを殺したかったわけじゃなかった! ただみんなの幸せを守りたかっただけ、だから戦うべきは、憎むべきはファントムでも魔女でもなかったの!!!!」
 【真実の双剣】が弾かれダーク・ヘンゼルはバランスを崩した。
 「そんなベアトリーチェの想いを……そして今もまた兄さんの命を利用し弄ぶ、どこの誰か知らないけどそいつこそ真に倒すべき敵よっっっ!!!!!」
 叫びと共に右腕を繰り出す、そして金色に輝くブレードがダーク・ヘンゼルの胸にある【ダーク・コア】を貫いた。
 「……ぐっ……ぐあぁぁぁあああああああああああああああああああっっっ!!!!?」
 貫かれた【ダーク・コア】にひびが入りそれが広がって行く、その苦痛に絶叫しながらもダーク・ヘンゼルはグレーテルに右腕を伸ばそうとした。 
 「……え!?」
 しかし【真実の双剣】が消えたその手は抵抗するために延ばされたわけではなかった、小刻みに震えるその手はグレーテルの頭に優しく置かれ、そして彼女は間違いなくその言葉を聞いた。
 「……強くなった……な……ありが…とよ、縁寿……」
 次の瞬間に【ダーク・コア】がパリンという音を立てて砕け、そして獣の様なダーク・ヘンゼルの外殻もまた砕け散りグレーテルの兄である赤毛の青年の本来の姿を取り戻す。
 「……!!? お兄ちゃん!?」
 浮力を失い落下しそうになる戦人の身体をあわてて抱きとめるとその身体の冷たさにぎょっとなる、素人が考えてももうすぐ命の炎が失われると予想出来た。 
 「お兄ちゃん……お兄ちゃんっ!!!!」
 「……いいんだ縁寿、これで……お前に…は……辛い事をさせた……が……」
 そして今にも消えそうな声で戦人は語る。
 戦人を蘇らせた者は戦人の人格を『19男の人格』で上書きしようとしたらしいが結果的には戦人の人格と『19男』が融合した不安定な人格となった。 それでも基本的には『19男』の人格がベースであったが先日の久遠との戦闘で受けたダメージと直接的に縁寿と対峙した事で戦人の人格が『19男』を浸食し始めたのだ。
 「…………その結果……お前を憎みながらもお前に殺されたがるという変なヘンゼルの誕生……ってわけさ……」  
 苦しそうに、しかし戦人は笑って見せた。 
 「お兄ちゃんっ!!!……お兄ちゃんっっっ!!!!」
 「……お前にはもう……大事な仲間がいる……友達がいる、大丈夫だ…な?」
 縁寿は黙って、しかし力強く頷いた。 それを見届けた戦人は満足そうな笑顔をした後ゆっくりとその目を閉じた。
 「…………お兄ちゃん?……お兄ちゃぁぁぁああああああああんっ!!!!」
 縁寿の絶叫にも戦人の目が開かれる事はなかった、そして彼の身体からほのかな光が放たれやがて光の粒子へと姿を変え戦人は消滅したのだった。
  


 グレーテルが光の翼を携え地面に降り立つその光景はまさに天使の降臨だったが、天草達はそれを笑顔で迎える気にはならない。 敵だったとはいえ兄を倒し絶叫する様を見てそれが出来る程無神経ではない。
 「…………お嬢」
 「天草……大丈夫よ、ちょっと……疲れただけ……」
 それだけ言うとグレーテルは変身を解く、その直後に急激に疲労が襲い身体中の力が一気に抜け意識を失いそうになった、天草が慌てて支えなければ倒れ込んでしまっていただろう。
 「お嬢っ!?」
 「…………あたし本当に……これで良かったのかな?……もしかしたらお兄ちゃんを助ける方法がまだあって……あたしは間違った事をしたんじゃないのか……な?」
 「そんな事はない!! 君は戦人を……兄を魂を邪悪な者共から救いだしたのだ、それは間違いないっ!!」
 叫ぶように言ったのはゴートだ、彼はエターナの母親である魔女の久遠から戦人は絶対に助けられないと聞いている。 だからこそ縁寿に戦わせず自分の手でヘンゼルを倒すべきと考えた、しかし結局何も出来ずに縁寿の心に深い傷を負わせてしまう自分を不甲斐ないと思う。
 「……でも許せないよ……あたしは絶対許せない! 縁寿にも戦人をにもやりたくない事させて、縁寿をこんなに悲しませて……絶対に許せないっ!!」
 今にもすっとんで行きそうな勢いで憤るエターナ、天草やゴートの様に縁寿を気遣うより自分の感情を出すのがこの子らしいと縁寿は思えた。 
 そんなエターナを見ていると何となくほっとし、そしてそのまま意識が薄れていった……。





〜蒼き戦士グレーテル物語〜


 第五章 ヘンゼルとグレーテル



 ヘンゼルとの戦いから数日が過ぎた、その間縁寿は食事にはやってくるもののそれ以外は部屋にこもりっきりとなっていた、部屋に行っても今は一人になりたいと言うのみである。
 家族をその手で討った女の子を元気づける様な器用な事が傭兵として戦場を巡って来た天草に出来ようはずもなく、時間が解決してくれるのを待つしかない、その意味では今のところ出撃要請がないのは幸いと言える。
 「……?」
 バタンと玄関の扉が開いて閉じた音を聞いたのは夕食を何にしようかと思いつつ買い物に出ようかという時だった、不審者かと警戒しつつも玄関に行ってみるとそこには一枚の紙が落ちていて『エターナちゃん参上〜♪』と書かれていた。
 「……ああ、お嬢を元気づけに来たのか……」
 エターナの姿は天草には見えないのでこの家に上がる際には何かエターナが来た事を知らせる物を置いておく事にしている。 
 元気の塊の様に明るいエターナと話でもすれば縁寿の気も少しは紛れるかもしれない、もちろん縁寿が会ってくれればだが……。それと同時に悔しい様な寂いそうな気持になる天草だった。
 「……結局俺って何にも出来てねえなぁ…………」 


 「縁寿〜! 縁寿ってば〜〜〜〜〜!!!」
 扉をドンドンと叩くながら叫ぶが返事はない、最初に『一人にして』と言ったきりだった。 しかしそう言われて引き下がるエターナではない、良くも悪くもそういう空気を読まない子なのがエターナだ。
 「……むぅ?」
 それでも五分以上続くと流石にどうしたものかと手を止めて唸る、しばらく考え込んだ後何やら思いついたように一人頷く仕草をした。 そして【永遠の腕輪】を【永遠の音金槌】へと変形させた。
 【永遠の音金槌】は見た目はかわいいピコハンなのだがエターナの魔力を込めて叩きつける事で相応の破壊力を持たせる事ができるという優れものなのだ。
 「とりゃっ〜〜〜♪」
 かけ声とと共に扉に叩き付けらたピコハンがピコっ♪という音を発し直後にドカンと言う破裂音を響かせて扉をふっとばすのであった。 そしてそのまま何事もなかったかの様に縁寿の部屋に入って行くとその部屋の主はベッドに腰掛けたまま茫然と固まってふっとばされた扉の破片を見つめていた。
 「……エターナ……?」
 「やっほ〜縁寿〜♪ 縁寿が開けてくれないから強行突破しちゃったよ〜☆」
 悪びれた様子もなくにっこりと笑顔で言う。
 「……エターナ……あのね……」
 「はい、これお土産だよ?」
 「……へ?」
 エターナ差し出したのは奇麗な赤いキャンディーだった、何故か包み紙に包まれていない。 縁寿はそれを手にとり眺めて見るがこれといっておかしいところはない普通のキャンディーである。
 「……これって……?」
 「いいから食べてみて? 美味しいよ、あたしの創ったキャンディーは☆」
 「エターナが?」
 エターナが創ったというのが妙に気になるが彼女に限っってつまらないいたずらをするとは思えないし、ましてや毒入りなどということがあるはずもない。 おっかなびっくりという様子ながらも縁寿はそのキャンディーを口に含んでみた。
 「どう?」 
 「……甘くて美味しい……そして……」
 僅かであるが心が温かくなり幸せな気分になる、そんな不思議な味だった。 
 「……エターナ、このキャンディーはいったい?」
 「あたしが魔法で創ったキャンディーだよ、人間の『幸せな時間のキャンディー』なんだ〜♪」
 エターナは人間の時間をキャンディーにする事が出来る、幸せで充実した時間程甘くなり、エターナは基本的にそのキャンディーを摂取するだけで生きていける。 そうでなければ子供のエターナが一人で生きてこれるはずもない。
 時間を盗られた人間に害はなく、せいぜい時間が早く経過したように感じる程度である。 誰しも経験がある『楽しい事をしていたらあっという間に時間が経っていた』というやつである。 そしてこの魔法がエターナが『時間泥棒の魔女』である事の意味である。
 「……そんな魔法があったなんて……」
 魔法とは敵と戦うための破壊の力でしかなかった縁寿にとっては驚きである、たかだかキャンディーを創る程度で何かの役に立つような魔法ではないがとてもエターナらしい魔法だと思えた。
 「これはね、縁寿と戦人と時間だよ? 二人で遊園地で遊んでたの、楽しくて幸せそうだったよ〜」
 「……えっ!?」
 「縁寿が元気ないって聞いたから出来るだけ甘いキャンディーをあげようと思ってね〜、それどう? 元気でた?」
 「……え?……あ……う、うん……」
 言われて先程より気持ちが軽くなっているのに気がつく、エターナと話をして少しは気が紛れただけなのかも知れないが縁寿はそれだけではない気がする。 このキャンディーがエターナの言う通りの物なら自分は『この世界の縁寿』の幸せを分けてもらったようなものではないかと思えた。 
 「うん、良かった! 縁寿も辛いのは分かるけど、やっぱ縁寿には笑顔でいてほしいもんね」
屈託のない笑顔で言うエターナには縁寿の思っている様な考えはない、単に甘いキャンディーで元気になってねという程度の発想しかない。 
 「貴女って本当に不思議な魔女ね、でもそうね……兄さんだってあたしが笑顔でいた方がきっと喜ぶわよね?」
 「ん?……うん、そうだと思うよ〜。 あたしも皆も縁寿が元気でいてほしいと思っているよ〜♪」
 戦人の事を忘れはしないし、どうであれ彼をこの手で討ったとう事実は消えはしないがふっきらなければいけないのだろうと思えた。 縁寿にはまだ彼女を大事に思ってくれる人達がいるしこの世界の家族を助けるためにも立ち止まってはいられない。


 「やれやれ、何とかことなきを得ましたか……」
 無事に爆弾も処理しヘンゼルという男も倒された、ラムダデルタの狙いが何だったにせよこれでベアトリーチェに害が及ぶ様な自体にはならないだろうとワルギリアは安堵する。
 「それでエヴァの具合はどうなのですかロノウェ?」
 「はい、順調に回復しております」
 今回の一件でファントム唯一の負傷者がエヴァだった、ファンタジア城近くで起こった戦闘に自分も加わり大暴れしてやろうと勇んで出撃した所へエターナの放った【スター・バスター】が直撃したのである。
 もちろんエターナが狙って当てたのではなく、ヘンゼルへの攻撃の流れ弾ならぬ流れ攻撃魔法である、だから当然エヴァに当った事をエターナ本人は知る由もない。
 「……おかげで今回は事態がややこしくならずに済んだのですが…………」
 グレーテルにエターナにゴートがファントムにとっていぜん厄介な種には違いない、しかもグレーテルはヘンゼルとの戦いでパワーアップしているようなのだ。
 「我々は負けるわけにはいかないのです、すべての幻想の者のためにもお嬢様のためにも……勝たねばならないのですよ?」
 「それは分かっていますよロノウェ……」











 
 遊園地を襲う破壊の閃光、人々の憩いの場となるはずの施設が次々と瓦礫に変わって行く。
 「あはははははははっ!! 壊れろぉっ!! 壊れろぉっ!! みんな壊れちゃえぇぇぇえええええええええええええっっっ!!!!」
 その元凶たる煉獄七姉妹の最後の一人マモンの瞳は明らかに正気を失っている、夜も更けた時間帯で停止をしている観覧車のてっぺん付近に立ち狂ったように笑いながら自分の起した惨劇を眺めていた。
 「きゃはははははははは……え!?」
 そのマモンの数メートル脇を突如として激しい閃光が通り抜ける、驚いて下を見下ろすと十歳くらいの女の子が悔しそうに地団駄を踏んでいた。
 「あ〜〜〜〜!? またはずれたっ!! ていうか、どいつもこいつもそんな高いとこばっかにいないで降りてこ〜〜〜いっ!!!」 
 「落ち着けエターナ! ここはグレーテルにまかせて君は下がっていなさい!」
 見れば奇妙な黒山羊もいた、女の子の方はどうやら魔女の様だ。 期待していたセブンではないが敵であれば叩きつぶすだけであると【GEドライブ】のチャージを開始する。
 ちなみにこれは余談だが、この時はずれた【スター・バスター】は少し離れた場所でこの戦闘を監視していた蒼いツインテールの少女を直撃し大けがを負わせたらしい、もちろんエターナ達の知る由もない話である。
 「それは【GEドライブ】? すでに試作型が完成していたの!?」
 「え!? 誰……!?」
 ありえるはずのない頭上からの声に驚いて見上げるとそこにいたのはセブンの同様な蒼いスーツを装着した人物だった、その背に光の翼を生やしていてさながら天使か何かにも見える。
 「蒼い戦士?……セブンの仲間っ!?」
 「あたしはグレーテル、あんたの事情は知ってるわ……でもね、憎しみは憎しみを呼ぶだけだって分かりなさいっ!!!!」
 「何を……っ!!?」
 【GEドライブ】で迎撃しようと構えた瞬間に蒼いビームが飛来し【GEドライブ】を弾き飛ばす、しまったと思った時にははるか下まで落下してしまっていた。
 「まだ仲間がいた!?」
 次の瞬間にマモンを支配したのは怒りだった、憎悪を込めた目でグレーテルを睨むと【ブレード】を展開した。
 「何で!? 何であたしは一人なのにあんたにはそんなに仲間がいるのよっ!!? ふざけんじゃないわぁぁぁああああああああああああっっっ!!!!」
 感情に任せて飛行し正面から突っ込む、グレーテルが自分に向ける憐れみの籠った目も余計癪に障る。 迂闊に飛べば蒼いビームのスナイパーや魔女の魔法に狙われる事など思いつきもしないマモンの頭に合ったのはこの女を一刻も早く消し去りたいという衝動だけだ
 「あんたが勝手に一人になったと思いこんでるだけだって気がつきなさいマモン……【無限天使の双刃】っっっ!!!!」
 (冷静にならぬかマモン! そんなでは本当にすべてを失うぞ!)
 グレーテルにベアトリーチェの姿がダブりそんな声をマモンは聞いた、そしてその刹那グレーテルとマモンの姿が交差する。
 「……う……ぐっ……」
 苦痛の声を上げたのはマモンの方だった、彼女の【ブレード】はグレーテルの【双刃】の片方で受け止められ残った刃で腹を貫かれていた……。
 

 レッドとグリーンにイエローがやって来た時にはすべてが終わっていた、そして自分達の頭上から舞い降りてきた蒼い戦士を茫然と見つめた。
 「……そいつはマモンか!? お前まさか……」
 戦士に抱かれぐったりしているマモンに気がつきレッドは嫌な予感を覚えるが、戦士は首を横に振る。
 「大丈夫生きてるわ、目が覚めたら他の姉妹に会わせてあげなさいよ。 また暴走されちゃ大変だからね?」
 「君はいったい?」
 グリーンがいくらか警戒した声色で訊ねる、見た目はセブンと同様の姿だし敵意はないようが油断は出来ない。 何しろ彼女の傍には多少姿は違うがファントムの黒山羊と幼いが魔女らしき女の子がいたのだから。
 「……あたしはグレーテル……いいえ、うみねこセブン最後の戦士ブルーよ」
 「な!? 最後の……?」
 「そしてあたしは時間泥棒の魔女のエターナ、そんでこっちは仮面ランナー・ゴート。 えん……グレーテルのお友達だよ〜♪」
 「うむ、見た目はこんなだが私は人間の敵ではない」
 イエローだけでなくレッドとグリーンも驚いて思わず顔を見合わせてしまう、そんな三人をおかしいと言う風にグレーテルは笑う、しかしそれは馬鹿にしたという様な不快な笑い方ではなくいたずらっぽい可愛いと思えるような笑いだった。
 「うふふふふふ、うみねこ『セブン』なんだから七人目の存在は十分推理可能よ? それに魔女や山羊だから全部ファントムなんていうのも極端すぎると思わない?」
 そう言われてはっとなる三人、確かに金蔵の所持している【コア】の数が六個であってこの世界のどこかにまだ【コア】がないとは限らなかった、不覚だとちょっと反省する。
 「なら君達もファントムと戦っているのかい?」
 「私はあくまで支援に徹するがな、未来を勝ち取ろうとがんばる若者の戦いに水は差せん」
 「ファントムとって言うか悪い奴はぶっとばすだけだよ〜♪」
 グリーンの問いにそれぞれに答えるゴートとエターナ、嘘を言ってるようには聞こえないとは思える。
 「しかしいきなり魔女が味方ですって言われてもな……信用していいのか……?」
 「むぅ、そういう事言う?……そっちの黄色いのって朱志香でしょ? リムの……刻夢の友達の?」
 「は? 何であんたが刻夢を知ってるんだ?」
 正体を知っているのは多分グレーテル辺りから聞いたのだろうとは想像がつくが、エターナが遠方に住んでる友人の名前を知っている理由が分からない朱志香。
 「だってあたしはリムのお姉ちゃんなんだもん! そしてリムも実は魔女なんだよ〜〜♪」
 「なんじゃいそりゃっ!!? 刻夢が魔女でどうみても年下なあんたが姉っ!!?」
 エターナのとんでもない宣言に思わず叫んでしまうイエロー、レッドもグリーンもにわかには信じられないが後日朱志香が刻夢に電話し事実だと発覚する。 それだけではなくこのエターナとリムの姉妹は元人間で福音の家の出身であった事まで発覚し従兄妹組だけでなく紗音と嘉音も画然とする事になる。
 「……ま、とにかくこれからはあたし達も一緒に戦うわよろしくね?」
 「え?……あ、ああ……よろしく頼むぜグレーテル」
 グレーテルの差しだした手をレッドが握り返し握手を交わす、そしてこの日よりグレーテルの新たな戦いが始まるが、それはこれまでの様に孤独な戦いではないのだった。





※リムと朱志香の友人設定とエターナ達の福音の家出身設定は『時間泥棒の魔女企画』による設定となります。
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