番外編・憎悪の炎対天使の光刃


  「…まさかあんたが追ってくるなんてね須磨寺霞…いえ、今はファントムのカスミだったわね?」
 「過去世界へ行き歴史を変える、あんたも面白いことするじゃないのぉ? 右代宮縁寿…じゃないわね、うみねこブルー?」
 人気のない深夜の廃工場で交わされる会話、十メートル程度の距離を置き睨み合っている
 「…そこまでして母さんやあたしに復讐したい?」
 「…そうよ、あんたの母親…霧江姉さんのせいであたしの人生はメチャクチャだもの、当然よぉ?」
 そう言いながら右腕を掲げる、すると縁寿の周囲に炎が円形状に出現し一気に縁寿の身体を包みこんだ。 しかし次の瞬間には縁寿から発せられた光が炎を吹き飛ばし彼女はその姿を変えた
 「変身したわね、そうこなくちゃ面白くないわ!」
 「それがファントムから貰った力…さしずめ憎しみの炎ってとこね?」
 「…そうよ、本当はこの力で霧江や留弗夫…それにあの戦人って小憎も焼いてやりたかったんだけどねぇ、だからあんただけでも消し炭にしてあげるわぁっ!!!!」
 「…!!?」
 カスミの身体から炎が発せられそれが一気に広がり縁寿の視界が一瞬にして赤く染まる、続いて激しい熱波に襲われ顔を歪めた
 「あっはっはっはっ!!!! あたしの憎しみ思い知るがいいわぁっ!!!! 醜く焼け焦げてしまうがいいわぁぁぁああああああっ!!!!」
 カスミの憎悪を具現化したかのように紅蓮の炎が廃工場を包んでいく
 「あんた…自分も死ぬわよ?」
 「あはははっ! まさかぁ? あんたを殺した後でこの世界のあんたやその家族も焼き殺してやるのよぉっ!!! 死ぬわけないでしょうぉっ!!?」
 カスミの脳裏には霧江達が絶叫し自分に対し許しを乞いながら死んでいくさまが浮かんでいた、自ら発した憎悪の炎が彼女自身を焼き尽くそうとするのすら気がつかずに…縁寿は僅かに憐みの目をカスミに向ける
 「…あたしも死ぬわけにはいかなの、この世界の兄さん達を…大事な家族を助けたいから…」
 「あんた一人でこの世界のファントムと戦うのぉ? 愛しい兄さん達抜きでぇっ?」
 「…話は終わりよ、もう時間がないわ」
 だが縁寿はそれには答えず変わりに会話の終了を宣告した
 「逃がすと思う? 縁寿ぇぇぇええええええっ!!!!」
 「カスミぃぃぃいいいいいいっ!!!!! 【天使の双刃(エンジェリック・ツインブレード)】!!!!!」
 カスミの翳した手から出現した炎が襲いかかるが縁寿の両腕に出現した光の刃が斬り裂く、さらに驚愕するカスミ目がけて突撃しその身体を十字に斬り裂いた… 
  

 何台もの消防車が駆け付け消火作業を行っている、縁寿はその様子を遠巻きに見つめていた
 カスミの死体が出てくることはない、【天使の双刃】で斬られ死亡した幻想の存在は完全に消滅する、元人間とは言えそれは変わらない
 縁寿はくるりと向きを変えると歩きだした、まずはこの世界の右代宮金蔵と接触しなくてはならない。 そしてこの世界でも組織を結成しなくてはならない
 「…多分この世界でもメンバーは兄さん達…でも今度は絶対に死なせない……」
 ぎゅっと拳を握りしてそう誓うのだった


inserted by FC2 system