【黒幕案】
《イラスト》

・卯月華桜さん 1


・卯月華桜さん 2(後ろ短髪の前に髪型が長いver)


・卯月華桜さん 3(不敵な笑いとお怒り?ver)


・卯月華桜さん 4(服装案)


・卯月華桜さん 5(学生服案)





・らいたさん 1


・らいたさん 2(能力発動)





・永遠の17歳☆さん





・KENMさん





《SS》


アルブレードさん

                世界を混沌へと還す者             

 「……我が名はミラージュ、世界を混沌へと還す者」
 ミラージュという名はいつ誰が名づけたのかは知らないがそれなりに気にいっている、そうでなければ千年もの間も名乗っていたりはしない。 そしてその名前を眼前に立つ蒼き戦士に名乗る。
 「……ミラージュ?……あんた、只者じゃないわね」
 戦士の声が少し震えているのは高層ビル屋上の冷たい風のせいではないだろう、ミラージュのタダなならぬ強さを肌で感じているからであり、そして相手の強さが分かるのも強さの内と考えればこの蒼い戦士も十分強いと言える。
 「私が送り込んだヘンゼルを討ち倒してみせたグレーテル、その実力を見せてもらうよ?」
 「……!!!?」
 ヘンゼルの名に蒼き戦士――グレーテルの顔色が変わる、そしてすぐにその瞳に怒りを携えミラージュを睨んだ。
 「あんたが……あんたが兄さんをっ!!!」
 「そうだ、生き返らせ救った。 そしてそれをお前が再び壊したというだけだ」
 「ふざけたことをっっっ!!!!」
 激昂し感情をむき出しのグレーテルに対しミラージュはさながら感情を持ち合わせていないかのように淡々とした口調で言葉を紡ぐ。
 いや、実際に彼に人間と同等の感情というものはない。 人間でも幻想の者でもない古の神の一部がミラージュであり、その彼に人間と同等の感情があろうはずもない。
 「……私は真面目なのだけどね?」
 「とことんふざけた事をっ!! 【無限天使の双刃(インフィニットエンジェル・ツインブレード)】!!!!」
 グレーテルの両腕に白と金色の混じった光を放つ光刃が出現しと思うと彼女は間髪いれずに地を蹴り跳びかかって来る、怒りに任せた特攻に思えたがミラージュが反撃に放った【紅き楔】を回避してみせる程度には冷静な頭でいるようだった。
 「その黄金の光はベアトリーチェの力か……成程な、それでヘンゼルを倒せたか……」
 納得したように小さく呟くとパチンと指を鳴らすとミラージュの周囲の地面からドロドロとした銀色の液体が噴き出し、それが五つの三角錐状の物体になる。
 「……これは……?」
 「【魔導金属生命体エルス】……さあ、グレーテルを壊せっ!」
 エルスは再びドロドロになると今度はその形を人型へと変える、その姿にグレーテルは驚愕した顔で目を見開いた。
 「なっ……に、兄さん!?……どういうことよっ!?」
 銀色の身体をした右代宮戦人に表情はなくただ真っ直ぐにグレーテルを見ている。
 「ヘンゼル……いや、右代宮戦人を生き返らせた際に採取した彼の細胞の遺伝子データをエルスに取り込ませただけだ、こいつらエルスは他者を取り込むことでその姿だけでなく能力も吸収し自らを進化させていく……そういう人工生命体なのだよ」
 戦闘力も低く頭の悪い黒山羊、プログラムされた通りにしか動かないオートマタなどミラージュは手駒として信用出来ない、そのため独自に研究し開発したのがこのエルスである。
 「さあ行け、エルスよ」
 「……っ!!?」
 命令を受けエルス・バトラが攻撃を開始する、グレーテルは僅かに躊躇いをみせたもののすぐに反撃を開始し巧みなブレード裁きでエルス・バトラを斬り裂いていった。 【コア】とベアトリーチェの力で構成された【無限天使の双刃】は斬られたエルスは銀色の戦人の形から金属片となりボロボロと崩れていく。
 「ほう?」
 「次はあんたよ! こういうふざけた事をするあんたは絶対に許さないわっ!!!!」
 「……いいだろう……と言いたいが君にはまだ生かしておく価値はあるな」
 言葉と同時に新たに二体のエルスが出現する、それらの姿にグレーテルが驚いた声を上げる。 
 「こいつら……タイタスにスパロー!?……そっか、こっちの時間軸ではまだ生きてるのが当然ね、こいつらの遺伝子データまで取り込ませたのね!」
 「ちょっと違うな、彼らは直接取り込ませたのだよ。 実験としてね」
 「……なっ!?……あんた、こいつらの……ファントムの仲間じゃないの!?」
 グレーテルの言葉にミラージュは微笑を浮かべて返す。
 ミラージュにとってファントムなど目的達成のための道具に過ぎない、しかしぞんざいに扱えば自分に不信感を持たれやがては組織として崩れていくだろうから普段は仲間想いで温厚なリーダーを演じなくてはならないのがちょっとしたストレスである。
 今日こうして自ら出撃したのはそのストレス発散とエルスのテストのためというのもあった。
 「……さてな? では今日は失礼しよう」
 だが、それをいちいちグレーテルに説明する必要はない、巨体でパワーのあるタイタスと素早い動きで敵を翻弄するスパローであればグレーテルも手こずるだろう、その間にミラージュは転移魔法を使うと姿を消したのだった……。


 ミラージュが自らの私室に戻った時に意外な来客がいた。
 「……フェザリーヌ・アウグストゥス・アウローラか、何をしに来たのか?」
 「……グレーテルと一戦交え結局見逃したか、どういう気だ?」
 この観劇の魔女がこちらの動向はチェックしているという事はミラージュも承知しているが思っている以上に情報が早いなと思う。
 「ファントムと人間が憎みあい滅ぼし合うには双方が強大な力を持つのがいいのだよ」
 徒歩の人間同士で正面衝突してもせいぜい痛いと思う程度だが高速で走る大質量の電車同士が衝突したらどうか? 力があるもの同士がぶつかってこそ破壊は大規模になるのである。 
 人間側に強力な力を持つ者がいればファントムもそれに対抗し力を持とうとする、そしてさらに人間はファントムに対抗するのに力を求めるだろう、そうしていくことで彼の望みである世界を混沌に還すだけの大破壊を起こせるのである。
 「…………お主はいったい……?」
 その説明にフェザリーヌはぞっとしたような表情をした、この何事にも動じなさそうな大魔女がそういう顔をするというのは少し愉快だった。
 「私は自分がどこで生まれ、そして何者かを知らない、しかしやるべき事は知っていた……この人間と幻想が生きる世界を混沌の世界へと還す……それだけだ」
 ミラージュは別に己に目的があって世界を混沌にしたいわけではない、ただ自分がそうするために存在するからそうするのだという本能に近いものである。
 それは自分の中に何者かに仕組まれたプログラムがありそれに従っているだけという不快感もある、しかしそのプログラム通りに動けばやがては自分――ミラージュという存在がどこで何のために生まれたのかという答えに辿り着くのではないかという期待もあった。
 「ふふふふふふ……私は私の望むようにするだけ、それを君はただ観劇し楽しんでいればいいのだよ? 観劇の魔女フェザリーヌ・アウグストゥス・アウローラ? はっはっはっはっ!」



白右鎖璃月さん

この世界の常夜の全てが暗い闇に閉じ込められている。
明ける陽はなく、満天の空も、星空もない。
全てが暗闇に閉じ込められ、偽りの世界だけが、偽りの光景だけが、眼に映っている。

そんな世界に囚われた籠の中の小鳥は、……空に向かい、羽ばたく事が出来るのだろうか?


【虚無の世界と狂った王】(ミラージュさん紹介SS)


「……状況は、どうかね?」
「首尾よく、順調と言った所デショウカ。うみねこセブンはファントムの本拠地を見つけ、総攻撃を終えた様デス」
「……そうか。―――“小鳥”はどうなってる?」
「―――魂は我が世界に、器は本来のあるべき場所に、躯は……自らの手で封じた様デス」
「ふむ…。まあ、及第点と言った所かね。……宜しい、下がりたまえ」
「ハ、ハイ、デス…。」

司祭の服装をした鉄の聖女は、全身を震わせながら男の元を去ろうとする。
男に怯えながら、恐怖を抱きながら、今でも逃げ出したい気分を味わいながら、去っていく。
震える身体を男に悟らせない様に、今の感情を悟らせない様に、その場を後にした。


残された男…。ミラージュは鉄の聖女を見送った後に玉座へと席に着いた。
静寂が満ち溢れた玉座の間には、無感の光景が溢れている。

ミラージュが座る玉座は白色で一切の装飾を施されていない。
無感、無臭、無常、それらを込めた玉座は王が座る為だけに建てられたものにはモノ作りの感情が込められてないのだ。
感情が込められていないという事はミラージュがこの玉座が建てられた意味を一切、理解出来ない仕様になっているという事になる。
という事は、心を理解出来ないという事だ。
だが心が出来ないからと言って不利益な事はない。

「………心の奥底にある思いを引き摺り出す力。―――それが私に与えられた能力か」

ニンゲン、偶像の存在、自然、果ては宇宙に至るまで、万物において生命があるように、心がある。
それはつまり、そのモノが弱い部分を引き摺り出す事が出来るという事だ。
弱い部分というのは、他人に、他のモノに晒したくない過去や弱さ。短所というのもあるが…。
ニンゲンのみに限り…。思いや感情もまた、弱点になりかねない。

強い思いは、時に闇に囚われ。
隠したかった本当の思いは、時に世界に囚われ。
憎しみや憤りは、時に自らの心に囚われる。


「―――面白いではないか」

仮面を被ったまま、唇を緩んだミラージュは自らの能力に満足していた。
他者の弱みに付け込み、闇に囚われる力。
闇に囚われてしまえば…。抜け出すのは難しい。
どんなに輝かしい光が世界を満たそうとも、闇に囚われたモノは光に救済されない。
救済されないまま、静かに自らが狂い出すまでは身を潜めているのだ。

そして、それは時に、矛盾という形で浮かび上がる。
狂った幻想、歪み切った願い、矛盾というモノに阻まれた現実と虚構
理解されない望みを抱き、理解してくれない思いを抱いたまま…。
ニンゲンは、自分が他人よりも人格が歪んでいる事に気付かずに……生きていくのだ。


「狂った公演、歪んだ戦隊ヒーロー、そして……その中心にいる男、右代宮戦人。
 いやはや、偶然ともいうべきか必然ともいうべきか。ともかく、この1986年は面白い。
 可能性の世界 可能性の偶像。数多の観測者が生み出した無数の偶像を基にしたモノガタリ…。
 その終焉を、私自身が看取れるのだからな。待っているが良い、うみねこセブン。
 私自身が赴くまでは精々、生き長えるが良い。――――フッハハハハハハ!!」


白きマントは純白と虚構を示し、漆黒のスーツは男の心を示す。
それを隠す仮面は全てを悟らせない象徴。
髪の色と眼の色は、その眼に闇しか映らせない。

王座は男の心を示し、城は男の負の大きさを示す。


男の願いは唯一つ。

右代宮戦人率いるうみねこセブンをこの手で殺す事。


そう、この男もまた…。

狂った幻想と歪んだ願いに囚われた一人なのだから…。


オワリ




祐貴


その1

「次から次へと……一筋縄では行かないなぁ」

 遊園地を歩きながら、唸る朱志香。

「相手は一つの国……一つの世界みたいなもののようだからね。絶対人数的に僕達より多い。活動範囲と時間が限られるらしいという向こうの事情と、守備側のアドバンテージでなんとかなっているような状況だから、本拠地に討って出るのは難しいし、相手を滅ぼすような状況は僕達の望む形じゃない。前線基地を潰せば諦めるかと思ったんだけど……ね……」

 思案するように腕を組んで考え込む譲治。

「……詳しい事はわかりませんが、ロノウェ様は本国という言い方をされていました。本拠地の上層部に地球を手に入れたい思惑があるのだと思います」
「問題はそれが何かって事だね。それがわかれば和平の道もあるかもしれない……その為にはその上層部とコンタクトを取る必要がある訳だけど……」
「あのヱリカという幹部は、簡単に取らせてくれないだろうね」

 沈黙が間に下りる。

「うー! 皆暗い顔、ダメ!」
「……確かに真里亞の言う通りだな。息抜きに来てまで考えるのはよそうぜ。抜く時は目一杯抜かないと参っちまうぜ。行くぞー! 真里亞!」
「うーうー!」

 走り出す真里亞。人の間をすり抜け、奥のアトラクションへと走っていく。

 ドン!

「あ!」

 同じように人の間を抜け、前に出て来ようとした少年と真里亞が接触する。
 小柄な少年が手にしていたポップコーンのカップが落ち、中身がばっと辺りに広がった。

「ご、ごめんなさい!」
「あ、いや、僕の方こそごめんなさい」

 慌てたようにしゃがんで、ポップコーンを拾い始める少年。

「うわ。こりゃ、派手にやったなぁ」
「真里亞、走っちゃ駄目だろ」
「いや、僕の方もぼーっとしていたから。巻き込んでしまってすみません」 

 ぺこりと頭を下げる少年。

「おお。美少年……って、ごめん。つい」
「ありがとうございます」

 少女のように整った美貌の少年は、はにかんだように微笑んだ。

「真里亞が失礼したね。これ代わりのポップコーン……」
「あ、す、すみません。いきなり出て来た僕の方も悪かったのに……気を使って頂いて……ありがとうございます」

 何度も何度も頭を下げ、戦人達を見送る少年。
 その背後に黒い揺らぎが生まれ、次の瞬間、その背後に一つの人影が現れる。

「如何ですか?」
「単なる普通の子供……それ以上でもそれ以下でもないですね。あんな取るに足らない子供に手を焼いていたとは……ワルギリア達も落ちたものだ。……既に失脚したものの事などどうでもいいですが」

 柔和な光は影を潜め、冷たい光がその瞳を覆う。

「平和……ですか。そのようなものはほんの一時の揺らぎ、幻に過ぎない。この世の始まりは【無】であり【混沌】……今のこのありようこそが歪み……世界はあるべき姿に戻るべきなのですよ」

 伸ばされた手が、傍の木々に触れる―――混沌に侵された木々は一瞬にして崩れ落ちた。

「……このように…ね……」



その2


「ベアトリーチェ様の消息は依然不明……という訳だね。我がファントムのトップの行方が知れぬままとは……困った事になったものだ」
「も、申し訳ございません!」

 頭上から聞こえてくる声に、ヱリカは更に深く頭を垂れた。

「お探ししてはいるのですが、山羊達は人間界に長くいられませんので……我らの存在を人間達に刻み付ける襲撃と平行してとなると中々……」
「ふむ。……人間界には、ワルギリア卿の息がかかった拠点があったであろう。ファンタジアとか言ったか。そこの者達を使えば良いのではないか」

 ヱリカの後ろに控えていたワルギリアは、向けられた言葉に顔を上げる。
 微笑みを浮かべた端正な美貌の少年の姿が瞳に飛び込んで来た。
 一見ごく普通の少年―――だが、その瞳はどこまでも深く昏い。映像越しだというのに、強大な力と強い圧力が伝わって来る。

 ファントム宰相ミラージュ―――ファントムのトップはベアトリーチェだが、実際に実権を握っているのは、この少年である。
 もちろん見た目通りの年齢ではない。少なくとも1000歳以上……魔女達をも凌ぐといわれているが、その正体は杳として知れない。
 わかっているのは、彼がファントムの支配者であり、ワルギリア達が束になっても叶わぬ力の持ち主だという事だ。
 

「もちろん、ファンタジアの者達も動員して探しておりますが、今のところ芳しい情報は上がって来てはおりません」
「そうか。こちらにいないという事は、人間界に落ちたか、何処かの手の者に囚われているか……すぐ見つかるか、囚われていたとしても、所在が知れるかと思っていたが……何らかのアクシデントが起こっているのかもしれぬな。おまえも教育係として、心配であろう」
「は、はい」
「ベアトリーチェ様は、ファントムのトップとして、大切に育てられた……深窓の姫君とでも言うべき方だ。さぞかし不安に思っていらっしゃる事であろう。早く探して助け出して差し上げねばな。本来そのような前線の辺境にいていい方ではないのだから……強いお望みであったから従ったが、このような事になろうとは」
「……申し訳……ございません……」

 ワルギリアとしては、ひたすら頭を下げ続けるしかない。
 思う事は多々あれど、それを表に出す事は出来ない。ベアトリーチェの為に、従い続けねばならないのだ。

「ワルギリア卿達では力不足だったということでしょう。このヱリカが来たからには、そのような事にはなりません。必ずや望まれる成果を出してご覧に入れますわ」
「それは心強い。期待しているとしよう」
「ただ……ベアトリーチェ様は本当にご無事なんでしょうか。あの爆発に巻き込まれて、無事ですむとは……」
「どういう状態かはわからぬが、生きていらっしゃるのは間違いない。ベアトリーチェ様は、このファントムの力の源たるべき方だ。その存在が滅するような事があれば、ファントムにもそれなりの影響がある筈……。一刻も早くお救いしてくれ。あの方はファントム全ての人々の希望なのだから」

 案ずるような眼差、穏やかな微笑み。

「はっ。必ずや」

 声を張り上げるヱリカの後ろで、ワルギリアは軽く唇をかみ締めた。
 国を思う理知的な宰相閣下……人間界への強行な侵攻姿勢はあるものの、ファントムの為と思えばおかしなことではない。より良き場所を求めて戦うというのは、古今東西行われて来た事だ。
 彼の行動はファントムの宰相としてごく当たり前の事に見える。

 だが、本当にそうだろうか。
 これだけの力を持ちながら、影の存在でいるのは何故か。彼ならばベアトリーチェの代わりにトップに君臨することも可能な筈だ。
 彼と相対して感じる底知れぬ深淵―――それは果たして自分の気のせいなのだろうか。


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