『今回予告』
ベアト「今回は我等ファントムが主役。うみねこセブンの出番は無い。これで皆勤賞は誰も無しとなったのぉ…くくくくく、残念でしたぁ☆」
戦人「ふざけんな!それで良い訳が有るかああぁ!」
朱志香「そ、そんなの有りかよ!?色々と間違ってるだろ!!?」
譲治「納得行かないね…。早くも総集編みたいな話なんて早過ぎるんじゃないかい?」
真里亞「うー。今日はファントムの皆さんの会議と思惑のターンなの。一応予告でみんな出たからこれで大丈夫♪」
戦人「ちくしょう!こうなったらサッサと始めてサッサと終了だぁ!」
第8話「打倒うみねこセブン会議。ファントムの謎」
【オープニング】
此処は『Ushiromiya Fantasyland』の中央の城の地下会議室。
広大なる円卓を囲むのは見る者が見れば恐怖で動けなくなる事は間違いないだろう。
煉獄の七姉妹、シエスタの姉妹兵の00、410,45、大悪魔ロノウェにガァプ。
更には魔女のエヴァ、ワルギリア、そして…ファントムの首魁たる無限の魔女ベアトリーチェ。
世を恐怖に陥れるファントム幹部揃い踏みの会議なのだから。
ワル「お忙しい中、よく集まって下さいましたね皆さん。今回の会議は他でも有りません…」
ルシ「我等に刃向かう者達…『うみねこセブン』について…ですね」
そう。既に幾度と無くファントムの作戦を阻止して来た六軒島戦隊、『うみねこセブン』…。
最早ちょっとした座興と言う訳にも行かぬほどの被害を受け本格的に今後の方針を練る段階まで来ていたのだった。
エヴァ「面倒ねぇ…結構追い詰めてたでしょお、私ぃ?あんな感じでこういっぺんにドカーンと吹っ飛ばすんで良いじゃない!」
45「エヴァ様!それは……あの…」
ワル「前回の無計画さを反省はしていないのですねエヴァ…。バイト先を増やしましょうか?」
エヴァ「冗談!冗談なんだからぁ本気にしないでよぉ!!」
ロノ「ウェイトレスも中々でしたが着ぐるみ姿も見てみたいものですねぇ、ぷっくっく。…しかしまぁ計画を練るにしても相手の情報は必須でしょう。これまでの戦闘を踏まえて分析に入ってみましょうか。では、まずはうみねこレッドについてを。ルシファー」
ルシ「はい。うみねこレッドについて報告致します。レッドの赤が示すとおり直情傾向がやや見られますがその分各メンバーを引っ張る役割を持っている様です。恐らく彼がチームリーダーで間違いないでしょう。これまでの戦いにおいても最も大きな戦果を上げています」
レヴィ「【ガン・イーグル】とか言う銃から発せられる【蒼き幻想砕き(ブルー・ファントムブレイカー)】…メガラもクラゲラもこの一撃に破れているのよね〜。うぅ、怖いよぅ(涙)」
ベルフェ「会議中には泣かないでくれレヴィ姉…。確かに威力は壮絶だが所詮は銃撃。かわせば何とかなる」
エヴァ「レッドの銃に対しての対応としてはそれが正解よねぇ。けどこの間の私の襲撃ではうみねこピンクとの合体攻撃までして来たわよコイツは。これ以上厄介な技が増える前にさっさとヘソ噛ませてやりなさいよ、誰か」
ベルゼ「こう言う手強いのはやっぱりウチのリーダーのルシ姉が相手するべきよね。宜しく〜♪」
ルシ「おい!私に丸投げするな!!」
410「ほほう。長女の実力を思い知らせてやるつもりなんだにぇえ…応援するにぇルシファー!」
45「わ、私からもエールを遅らせて頂きます!!」
ルシ「お、おい!だから話を勝手にだな…」
ベアト「うみねこレッドの撃破は任せたぞ。ルシファーよ、くっくっく」
ルシ「そ…そんなぁ…」
ロノ「ふぅむ。ではうみねこレッドへの対応はルシファーに任せるとして…。では次にうみねこグリーンです。確か最も直接的に対峙しているのは…ガァプでしたね?」
ガァプ「グリーンはねぇ、長ずれば中々良い男になりそうよ。頭も悪く無いし。私の有望なキープかしらねぇ」
ワル「………ガァプ。貴女は以前の戦いでうみねこグリーンを討ち取れたのでは有りませんか?何故見逃したのです?」
ガァプ「あ〜ら?そうだったかしらぁ?散々に打ちのめされて命からがら逃げたんだったと思うんだけどぉ?リーアってばボケて夢でも見たんじゃなぁい?」
ルシ「ええ?!ワルギリアさまが痴呆症?!!」
エヴァ「別に驚くほどの事でも無いでしょ。お年を召したなら当然のオチよ」
ロノウェ「それはいけませんねぇ。次のファンタジア社長を検討せねば…」
ベルフェ「ワルギリアさまの看護は私が担当しよう。どれだけ早く寝たきりに出来るか記録に挑戦したい」
ベアト「オイオイ師匠ォ?今回の集まりはボケ老人のイタズラかよォ?暇じゃ無いんだぜファントムはよおおォ?」
ワル「痴呆などしていません!!」
会議室に局所地震が巻き起こり壁に亀裂が奔り始める!
ロノウェが咄嗟に用意した鯖クッキーと鯖紅茶のコンボで何とか怒りを静めて落ち着いたが…危うく『ファントム幹部、会議中に屋根崩落で全滅』と言う史上稀に見るアホ組織と化する所であった…(汗)
ワル「コホン。では改めて検証の続きを…」
ルシ「この切り替えの早さ…やっぱり痴」
マモン「ルシ姉。袋叩きになりたくなかったら黙ってて。それはもうみんな分かってるから」
ワル「報告の続きを<●><●>!!」
ルシ「ひッ…ひいぃ!!」
ガァプ「はいはい、落ち着きなさいってリーア。次に地震をやられたらホントに危ないから真面目に答えるわよ。グリーンのメインスタイルは中、近距離型。中距離としてのナイフ投げも中々上手いけど格闘技の方が今後は伸びて行きそうね【魔王破岩脚】…アレの直撃は現時点でも勘弁願いたいわ」
00「格闘戦が得意で有らせられるガァプ様でも…ですか。やはり警戒すべき強敵と判断するで有ります」
ワル「そうですね…。次は、うみねこイエローです。ルシファー…はさっきので腰が抜けてますね。ベルフェゴール、お願いします」
ベルフェ「では、不甲斐無い姉に代わって報告させて頂きます。うみねこイエローはとにかく手数で攻める接近戦の格闘戦型です。防御力や気力も高い様で幻想怪人クラゲラの攻撃もかなりの時間を耐え抜いています」
ワル「…クラゲラ…ですか。あの怪人はいたぶる事も好きでしたから…防御、耐久力については少々検証は必要な所ですね」
サタン「全く!人質と言う卑怯な手を使った上に敗北とはファントムの恥晒しです!!」
ロノ「問題の多い怪人では有りましたからねぇ…彼に関してはコメントし兼ねますな」
ワル「幻想怪人も中々優秀な手駒なのですが…一部問題が有る怪人が出来上がる事も有るので量産は検討が必要ですね…」
エヴァ「欠陥品の話はどーでもいいからうみねこイエロー対策に話を戻すわよ。にしても…接近戦の格闘型かぁ…さっきのグリーンもだけどこの二人は長距離の攻撃オプションは無いわね。空中から仕掛けた私に防戦一方だったもの」
410「私の弓が有効かもだにぇ〜〜。なんならどさくさに紛れてズドンと狙撃してやってもいいにぇ。にひひ☆」
ベルフェ「…スマートな方法ではないが…一考の感は有りか」
45「先程のレッドとピンクの合体技や個々の得手を協力し合ってより一層の力を引き出すチーム力…我等シエスタの戦法を彷彿とさせられます」
ロノ「…ふぅむ。ならば破る為の方法も同一…と見るべきですね」
00「我等の弱点を晒す様な意味とも成りますが…恐らくは…」
アスモ「つまりぃ、フォーメーションを組ませない様に分断して各個撃破…って事ですか?」
サタン「良いわねそれ。我等七姉妹が本気になればあんな奴等に一対一でも遅れは取らない。相手は四人だから…早い者勝ちね!」
マモン「焙れる三人にはなりたくないわね。抜け駆け作戦でも考えないと…」
レヴィ「私も今度こそみんなに出遅れないんだから〜〜!」
ワル「まだ検証は終わっていませんよ、みなさん。続いて…これで最後となりますがうみねこピンクについてです」
ベルゼ「うみねこピンク…私の計画を阻んだ奴ね。…とにかく魔法が問題ねコイツは!後方支援って感じだけど防御の魔法も得意だから先に仕留めるにしてもどっち道厄介。一番邪魔だけど倒し難い相手です!」
サタン「その倒し難いのを何とかする為の会議だ!誰か意見は無いの!?」
エヴァ「ああら、後方支援ってのは接近戦に弱いのが基本よぅ。囮でも使って気を逸らしている内に背後からダイレクトアタックがセオリーでしょお?」
ワル「確かにそれがセオリーですが…正直このピンク相手にはそれも難しいですね。最近ではライオンの眷属を召喚して見せる場も有りますから本人の隙は付けても眷属が誘いに乗るか分かりません。…意外に最も手強い相手なのかも知れませんわ」
ベルフェ「ふむ…。総じて言える事では有るが…やはり変身前に叩くのが最も確実なのでは無いか?この様な情報を得る為に飼っている連中を上手く使えればその正体も判明すると思うのだが…」
ロノ「中々面白い視点な意見ですねぇ…で、どうなのですかな。あの福音の家の二人からの報告は?」
ワル「現在の所までは『調査中』の一点張りで成果は出していませんね。…確かに間違った情報では困りますから念入りに調べてくれているのは助かるのですが…」
サタン「これだからニンゲンは使えないのよ!どっちかに私がハッパ掛けて来てやるわ!!」
アスモ「駄目駄目。サタン姉が怒って急かしたらそれこそ誤報の元よ。悪魔に怒られて萎縮しないニンゲンなんてそうは居ないのよ」
ロノ「一通りの分析はこれで終了と致しますが…、総評として言える事は彼等の阻止行動は『迅速にして的確』です。このままでは我等ファントムの目的の達成はそれこそ無限に叶う事は無いでしょう…いえ。疲弊しきって潰えると言う選択肢は御座いますのでご安心を。ぷくくく」
ワル「笑い事では有りません!!それは有ってはならない事ですよロノウェ!!」
ロノ「…ならば。我等の目的達成の為にまず早急に成すべき事は唯一つです。…いえ、元よりそれ以外に無いと言う事ですがねぇ…」
ルシ「ファントムの未来の為にも『打倒うみねこセブン』は避けて通れぬ道…と言う事ですね。承知致しました。我等煉獄の七姉妹、必ずやご期待に添えてみせます」
ワル「頼もしいですねぇ皆さん。お嬢様からも激励のお言葉でも…て…あら?」
ベアト「う〜む。そろそろ遊園地ではパレードが始まる時間じゃなぁ…。また戦人や真里亞と共に見てみたいのぉ。……行って見たら…ひょっとしたら…」
ワル「…お嬢様。我等ファントムの今後の趨勢を考えようと言うこの会議で何を考えておいでなのですか?」
ベアト「お?おおおお!?す、すまんな師匠。うむっ!みな頑張って奴等を打倒せよ!以上!!」
ワル「何か適当っぽい気がしますが…(汗)まぁ良いでしょう。具体的な計画については今日の情報を踏まえて各自で熟考しておく様に。次の会議の際にそれらの案を要検討とします。では、これにて会議は終了とします」
【アイキャッチ】
会議を終えて城の社長室へと向かうワルギリア。それにロノウェとガァプの二人が続く。
ロノ「…どうお考えでしょうか?マダム」
ワル「お嬢様の事ですか?」
ロノ「はい。最後の締め以外にも、恐らく会議の半分以上を聞いていなかったと思われますが?」
ワル「…ふざけている所も有りますが…あの子なりに真剣では有ると思っていますよ…」
ガァプ「それは買い被りよね〜。リーチェはファントムの作戦遂行に真剣とは言えないわよ。……まぁお飾りなんだから真面目になんかやってられないのも分かるけど……リーアが頑張るしか無いんじゃなぁい?」
ロノ「『組織の鍵はナンバー2が握る』ですね。頑張って下さいマダム。私はお嬢様の護衛兼執事で御座いますのでファントムの統制、総括は全てそちらにお任せ致します」
ワル「面倒事は私に丸投げですか?貴方も将軍と言う肩書きは持っているでしょうに…腕が鈍っていると感じた時が有れば何時でも前線に出て振るって頂いても良いのですよ。貴方を討ち取れる者などまず居ないのですから…」
ロノ「ぷっくっく。少々語るに落ちましたねぇ。ならば何故私を真っ先にうみねこセブンにぶつけないのか…。総指揮官も副官も迷っている様ではこの先…芳しい成果が得られるとは思えませんね」
ワル「…私が副官である以上…どれだけ任されようとも総指揮官の意に沿うのが職務と言うものです」
ロノ「…ふぅむ。正直ファントムと言う組織の根幹の存在意義そのものが迷う所ですな…」
ガァプ「…グリーン見逃しの件が有る私が言うのも悪いんだけど……何時までものらりくらりとは行かないわよ。余りにも成果が無さ過ぎると……」
ワルギリアとロノウェの二人は頷き有ってガァプのその先を制する。
ガァプ「……これは失礼。じゃあ私は一足先に帰るわね〜」
異空間の穴に落ちてその場から消え去るガァプ。
残されたワルギリアとロノウェは軽く周囲を見回してから会話を再開する。
ロノ「…やはり、ガァプも様々な懸念を持っている様ですねぇ…」
ワル「ああ見えても鋭く賢いですからね…。私も…何やら大きな謀略を感じないと言えば嘘になります。…ですが、我等の目的を達成出来なければファントムのみならず多くの幻想の者達が極寒の冬の時代を迎える事となります。誰かが…やり遂げなければならないのです」
ロノ「……うみねこセブン…彼等と我等の戦いの先に果たして何が有ると言うのか…。我等にとっても藪を突いて大蛇が出るのかも知れませんね。おや、あれは?」
ロノウェがふと窓の外を見ると城のバルコニーからパレードを眺めているベアトリーチェの姿が目に入った。
これまでに執事として長年仕えて来たロノウェにさえ一度として見せた事が無い表情…。
イルミネーションの美しさに魅入られる様に眺めつつも儚さを感じさせる瞳…
その隣に誰かが来る事を期待しているのだとロノウェは感じた。
…同時にその期待の相手は自分やワルギリアでは無いのだとも…。
ワルギリアもまたベアトリーチェのその変化に気付く。そして、ロノウェと全く同じ感想を抱いていた。
ワル「……お嬢様……まさかとは思いますが…」
ロノ「……そのまさかかも知れませんねぇ」
ワルギリアとロノウェはベアトリーチェのその変化を喜べなかった。
その瞳が儚いのはどれ程期待しても辿り着けない存在を待っているからだ。
この城のバルコニーに、ベアトリーチェの隣に絶対に辿り着けない者。
それはこの城にとって招かれざる存在と言う事。
幻想結社ファントムの長たるベアトリーチェとして…
その感情はおそらく抱いてはならない相手に対してのものだろうと二人は察してしまったのだった。
一方その頃…。
ワルギリアとロノウェの二人と別れたガァプは…
上空数千メートルの高度から延々と加速しながら落下を続けていた。
ガァプなりの気分転換…とでも言えばいいのだろうか。
凄まじい落下の加速も空間移動を繰り返す事で相殺させながら空の遊泳を延々と続けるガァプ。
だがそれは遊んでいる訳ではなく…少々苛立っていた気を静める為の八つ当たりの様なものだった。
ガァプ「…そもそも…会議以前に根本的におかしいのよ。私達ファントムの襲撃に合わせて呼応するように現れたうみねこセブン…数々の武器は明らかに我々幻想の住人を討つ為に作られている物。……タイミングも下準備もバッチリ。…まるで私達が現れる事を『知っていた』かの様に………」
落下しながら思考を巡らせて呟くガァプ。
ワルギリアとロノウェに遮られた後に続くべき言葉をこの空の遊泳では聞ける者は居まいと自身の推理をまとめ続ける。
ガァプ「……グリーンとの交戦時に彼等は『ガァプシステム』と名付けられた空間転移システムを持っているらしき事を喋っていた。…これは証拠として決定打。…私の存在と能力を知っていなければ…こんな名は付かない。……予知能力者か…それとも…未知の来訪者がそれを伝えたのか……仕組まれた罠…とでも言うのかしらね……ファントムとうみねこセブンの戦いは………偶然か必然かは悩む所だけど……少なくともアイツが居る限り偶然の線はかなり希薄よね。これからが大変だけど…闇に呑まれないで」
繰り返していた空間移動を止め一直線に地面へと急速落下を開始するガァプ。
激突まであと10秒と言う所で思いを込めた言葉を呟いてその落下を締め括る。
ガァプ「リーチェ…私の大切な親友」
地上への落下スレスレで再び異空間を展開してその闇に呑み込まれるガァプ。
次の瞬間には空の遊泳を終えて自室のベッドへと落ちてそのまま休息に入る。
ベアトリーチェの親友として様々な不安要素への憶測を抱えつつも…
その翌日には普段通りのファントム幹部としての振る舞いを取り戻すのであった。
【エンディング】
《This story continues--Chapter 9.》