『今回予告』
待たせたわねぇえ?テレビの前の愚民!
ついに今回はこのあたし、エヴァ・ベアトリーチェ様の登場よぉ?
あたしのポップでキュートな魔法に存分に酔いしれなさぁい…、
………って、あんた達?何処見てるのよ?
え?邪魔?ベアバトが見えないからどけ?
ちょっと!!何処見てるのよ!そんなの私が主役の7話のおまけでしょう?!
…え?ババァは引っ込んでろ?真里亞は可愛い?
〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!

『六軒島戦隊 うみねこセブン』 第7話 「邂逅」

皆まとめて臍でも噛んで死んじゃぇばぁ〜!……うわぁあああああん!!


【オープニング】


「真里亞〜、いい加減機嫌直せよ…、パレードはずっとやってるんだし、また皆で見に来ればいいだろう?」
「…うー、約束したのに、真里亞すっごく楽しみにしてたのに…、
譲治お兄ちゃんも、朱志香も縁寿も嫌い!嘘つき!…うー……」

ぐすん、と鼻を啜った真里亞が戦人が呼び止める声も聞かずにすたすたと歩き続ける。
振りむきもせずに歩き続ける真里亞の背を見て、戦人は深いため息をついた。


ことの始まりは、先週。
今日から始まる新しいパレードを皆で見ようと約束したことからだった。
戦人達はもちろん、誰よりも真里亞が楽しみにしていたのだが、
運悪く朱志香は日直の仕事、譲治はゼミ、
そして縁寿は体調を崩してしまったため、来ることができなかったのだ。

仕方がなく戦人は一人でお化け屋敷で待っていた真里亞に皆の事情を説明し、
諦めさせようとしたのだが彼女は納得せず現在に至る、と言うわけだ。

これ以上は何を言っても、彼女の機嫌を直すことは出来ないだろう。
だからと言って一人にさせておくわけも行かず、
戦人は拗ねた…、そしてそれ以上に寂しそうにうな垂れたその小さな背を唯追いかけて歩いていた。
真里亞の方にも特に目的地があるわけではないから、自然と進む方向は無茶苦茶になる。
ただ、戦人に顔を見られることを避けて奥へ奥へと進んでいくうちに、
徐々に周囲の光景は見慣れたファンシーな建物ではなく、深い森へと変わって行った。

どうやら、ハロウィーン・ミラー・ハウスがある「レインボーステーション」エリアを出てしまったみたいだった。
普段あまり足を踏み入れたことのないエリアに戦人は物珍しそうに周囲を見渡す。
どうやらここは「レインボーステーション」の隣にある「ウィッチハート」エリアのようだ
一面の木々に、鳥の鳴く声。
まるで本当の森の中のような光景の所々にアトラクションと思われるゴシック調の建物がいくつか見えた。

その中の一つに戦人が目を止め、足を止める。

「…なぁ、真里亞?そろそろ疲れたろ?
いい加減機嫌直してあそこで休まねぇか?ほら、アイス買ってやるからさ?」
「うー…?」

真里亞を引きとめ戦人がある建物を指差す。
涙を拭いながら真里亞が指差された方向を見る。
そこにあったのは小さな教会だった。

*******

「ほら、ストロベリーでいいんだよな?」
「うー!真里亞いちごがいい!戦人ありがとう!うー!」

近くに出ていた屋台で買ったアイスを手渡された
真里亞は礼拝堂の椅子に腰掛けたまま、嬉しそうに足を揺らした。
無邪気な顔でアイスを頬張るその表情には先ほどのような拗ねた様子も、悲しそうな様子もない。
漸く機嫌を直してくれた従弟に戦人はほっと安堵のため息をついた。

「…それにしても蔵臼伯父さんもすげぇな…、
普通遊園地のアトラクションでここまで本格的な礼拝堂を作るかよ?」
「うー、いずれはホテルとあわせて本当の結婚式場として使うつもりみたいだね。
アトラクションのモニターの手伝いも確か来てなかったっけ?戦人やってみたら?
きひひひひひひひひひひっひっひひ」

「ふーん、やってみるか」と生返事を返しながら、戦人がもう一度改めて礼拝堂の中を見渡す。
正面に作られた祭壇の横にはオルガンが、その後ろには綺麗なステンドグラスが設置され、
漏れた木漏れ日に照らされてキラキラと光っていた。
並べられた木製の椅子にだらしなく腰掛けて頭上を見上げてみると、
高い天井には鮮やかな色で様々な天使や神の絵が描かれた。

「ひゅう、こいつは本当に本格的だなぁ?あんな高い天井に絵を描くなんてな?
いっひっひ、もっと低く作っておけば少しは楽だったんじゃねぇか?」
「きひひひひひひひ、戦人。それじゃ意味ないよ〜?教会っていうのは
少しでも神の世界に近づくためにわざわざ天井を高く作ってるんだから?きひひひひひひひ」

勉強不足なんじゃないの?と、真里亞が嫌らしい笑みを浮かべる。
馬鹿にされたらしいことに気付いた戦人は少しだけむっと眉を潜ませた。

「…こいつは手厳しいな、じゃあ入り口の所に掘られている英文は?わかるのかよ?」
「入り口の上に書かれてるのは聖書の一文だね。きひひひ、これもわからないの?
駄目だよ?聖書ぐらい読んでおかないと?……右の謎賭けみたいな言葉はわからないけど、
蔵臼伯父さんがまた何かイベントでもやるために準備したんじゃない?」
「へー、さすがだぜ。じゃあ天井に描かれてる絵は?何の絵なんだ?」
「きひひひひ、あれはね……」


「イタリアの詩人、ダンテの名作『神曲』のワンシーンだな。
…くっくく、どうやら『Purgatorio』の中の一節を描いたもののようだなぁ」


突然聞こえた声に驚き、戦人と真里亞が振り返る。
金色の光がステンドグラスから漏れた木漏れ日を浴びて、きらきらと薄暗い礼拝堂の中で光っていた。

綺麗に結われた金色の髪、吸い込まれそうな青い目。
黒のブレザーと赤いミニスカートに身を包んだその女性は、
驚いて目を見開く戦人達を見ると、くすくすと妖艶な笑みを浮かべた。

「あんた…?誰だ?」
「ふふ、突然すまぬなぁ?
そっちの娘が随分と博識なので感心してついつい聞き入ってしまったわ。
娘よ、その年で聖書や神曲を読んでおるとは大したものだ、感心したぞ?」
「うー?真里亞偉い?うー!真里亞偉い!!」

褒められて嬉しそうに飛び跳ねる真里亞に女性は優しい笑顔を浮かべる。
彼女はそっと真里亞の頭に手を乗せ、数度撫でた。
暖かくて優しいその感触に真里亞もまた柔らかな笑みを浮かべるのだった。

楽しそうにじゃれる彼女達の光景に初めこそ警戒していた戦人も肩の力を抜く。
何だか知らないが、悪い奴ではなさそうだ。
ここに居るということは彼女もまた遊びつかれて休んでいる客なのかもしれない。
だが、遊園地に一人ということが少し気になって戦人はきょろきょろと辺りを見渡した。
まだアトラクションとして機能していない礼拝堂に戦人と真里亞、そして彼女以外の人影は見えない。
連れに買い物でも任せて、彼女は一足先にここで休んでいたのだろうか?

「…なぁ、あんた一人か?ここで何してたんだ?」
「おお、そうだった!そなた達の人影が見えたのでな、聞きたいことがあってきたのだぁ!」

戦人の言葉に女性は「ぽん」と手を叩くと、先ほどとは打って変わった無邪気な笑みを浮かべた。
突然浮かべられた無垢な笑顔に戦人の心臓が一瞬高鳴る。
だが、彼女はそんな戦人の様子には気付きもせずに、唯満面の笑顔を浮かべて言った。


「実は妾は迷っておるのだぁ!そなた、妾を遊園地の中心の城につれて行ってよいのだぞぉ★」
「………………………はぁ?」


********

「何ですってぇえええ!ベアトが一人で出かけて行ったぁああ!!」

その頃城では、ベアトが見えないと騒いでいたワルギリアが、シエスタの報告を聞いて悲鳴を挙げていた。

「は、はい…!散歩に行くと、すぐに戻ると仰っておりました…!いけなかったでしょうか…?」

報告をしていたシエスタ45はワルギリアのあまりの剣幕にビクリと肩を震わせ、遠慮がちに口を開いた。
45は元から気が強いほうではない。
おろおろとワルギリアの顔色を伺うように口を開いた45の顔色は悪く、語尾は徐々に小さくなっていった。
だがその目の前で表情を曇らせた45よりももっと顔色が悪い人物がいた。
彼女の目の前に立つワルギリアその人である。

「あ、あの子はこの遊園地の中ですら、一人で満足に歩いたことがないのですよ…!
今頃どうなっていることか……」
「い、いくらベアトリーチェ様でも遊園地の中なら…、一応大人(?)なのですし…」
「駄目です!あの子のことですから道行く人を行き成り捕まえて変なことを言ったり!
うっかりものを壊したり!無関係な人に無理難題言って困らせているに決まっています!!
どうするのですか?!今この瞬間にも、何の罪もない一般人をあの子が困らせていたら…!!」
「……ああ、そっち、ですか…」

どうもズレているような、それでいて的確のようなワルギリアの心配に
シエスタがどっと疲れた表情を浮かべて肩を落とす。
その横では悪魔の執事が一人楽しそうに笑いながらお茶を入れていた。

そんな彼等の横にもう一つ、別の影が近づいた。
レースに包まれた紫色のドレスが揺れる。
黄金の杖を持ったその少女は、くすくすと楽しそうに笑い転げると、
嫌な笑みを浮かべたまま彼等の前に立ちふさがった。

彼女の名前はエヴァ・ベアトリーチェ。
ベアトリーチェやワルギリアと同じように無限の力を受け継ぐ、ファンタジアの一員。
いい意味でも、悪い意味でも子供のように無邪気な、魔女だった。

「まったく、一人で散歩にすら満足に行けないなんて〜、
先代様ってばださい〜。臍間で死んじゃぇば〜。ねぇ?先々代様ァ?そうは思いません?」


「ど、どうしましょう…!ロノウェ!やはり直ぐにでも探しに行った方が良いでしょうか…!!」
「ぷっくっく、落ち着いてください、マダム。
とりあえず鍋の中にはお嬢様は居ませんし、お嬢様がいらっしゃる所に繋がってもいません」
「ワ、ワルギリア様!私が直ぐに探してまいります!遊園地中を走って探してきますので;;」
「にひ。日が暮れそうな探し方だにぇ〜」


「………………………………そうは…、思いません?ねぇ?皆さん?」

遠慮がちに、エヴァがもう一度同じ言葉を繰り返す。
しかしワルギリアを初めとした目の前の魔女達は、彼女の姿など見えもしないかのように
居なくなったベアトの行方についてわいわいガヤガヤと騒いでいた。
…エヴァの肩が小さく震える。


「いい加減にしなさいよぉおお!私の話を聞けってのよぉおお!!」

「「「「「!!!!!」」」」

大声で叫んだエヴァの声に流石の彼等も話を止め、目を見開いて彼女の方を見つめた。
きっと強くエヴァが彼等を睨みつける。
その瞳の隅には僅かに涙が浮かんでいた。

「あらごめんなさい、居たんですか?えっと…、エヴァト?」
「おや、おや。これはこれは失礼致しました。まったく、ちっとも、これっぽぉちも、気付きませんでしたw
家具として大変情けないことだと思いますよぉ、ぷっくっく」
「も、申し訳ありません…!!えっと…!その…!魔女様!!」
「にひ?誰だったかにぇ?45?EP5にこんな魔女様いたかにぇ?にぇ、にぇ」
「あんた達ほんともう臍噛んで死になさいよぉ!!うわぁあああん!!」

あんまりと言えば、あんまりの反応にエヴァがぎりぎりと歯噛みをする。
わかっている。
自分は立場上使いにくいキャラだと言うことは。
ベアトリーチェに従属しているわけでも、完全に味方しているわけではない。
そしてもちろん、人間側に味方しているわけでもない。
結局どちらか側にどうやって出すかを迷い、他にも出てないキャラがいるから
まぁまたの機会に出せばいいかな〜…とかなってしまうのもわからないでもない!!
しかし、もう7話だ!まったく!影も形も話も出ずに7話!

いい加減忘れられてるんじゃないかと恐れて、無理やり話しに参加しようとしても悪くはないだろう!
なのに…何よ…、この扱い…!!

ぎりぎりと悔しそうに歯を食いしばりながらエヴァは
目の前のワルギリア達を睨むが、彼等は少しも堪えた顔を見せない。
皆、気まずそうに視線をずらすか、もしくは楽しそうに含み笑いを浮かべているだけだ。

その目が語っていた。
「そんなこと言われても、出番が減ってるのは確かだし。
これからもそう期待できないんじゃないの?これからも」と…。

………ブチリ。

その表情に、エヴァの中で何かが切れた。


「うふふ、……うふふふふふふふふふふふふふふふ」
「エ、エヴァ…?」
「そうね、そうねぇ〜〜、確かに本編はもちろん、
うみねこセブンでも私の出番なんてそうそうないわよねぇえええ?
エヴァ?何ソレ?そんなキャラ居たっけ?
…幻想キャラ増えすぎたうみねこでの私の扱いなんてこんなものよねぇえええ?」
「だ、誰もそこまで言っていませんが……」
「くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす…、
だったら…、こんな話なんてあったって意味ないわよねぇええええええ!!!」
「「「「!!!??」」」」

エヴァが持っていた杖を振り上げると共に大きな爆音がして、ワルギリア達の視界を奪う。
一瞬の間を置いて、彼女達の視界が戻った時には既にそこにエヴァの姿はなく、
代わりに壁にあいた大きな穴と、空の青い色だけが目に飛び込んできた。


「あはっはははははははは!何を間の抜けた顔をされてるんですかぁ〜?
先々代さまぁ?私はこちらですよ〜?」
「!!」

聞こえた声を頼りに、ワルギリアが穴から身を乗り出す。
するとそこには空中にふわりと浮かびながらくすくすと嫌な笑みを浮かべるエヴァの姿があった。

「何を考えているのです!エヴァ!!」
「別に〜、大したことではないですよ〜、
ただー、私の出番のない物語なんて〜、……”イ”らない。って思っただけです!!」

エヴァの咆哮。
それと共に彼女が振り上げた杖が眩く光る。
目が眩むほどのソレから放たれた衝撃波は近くの建設中のアトラクションに当たり、一瞬で消滅させた!!

一瞬、辺りが奇妙な沈黙が辺りを包む。

…だけど、それは本当に”一瞬”だった。
次の瞬間に上がった大きな悲鳴を引き金にして、
辺りは逃げまどう人達が互いにぶつかり合い、叫ぶ地獄と化した。

「な、何を考えているのです…!エヴァ!!このようなこと、あの子は許可していませんよ!!」
「くすくすくす、先代様の意向なんて知りません。
私は、私の好きにさせてもらいます。……私の出番のない話なんて私は”イ”らない。
全てぐちゃぐちゃのぼろぼろにして、うみねこセブンを今回で打ち切りにしてあげるわぁあああ!

………あ、来週からはポップでキュートな魔女、
『まじかる、エヴァトリーチェ★』が始まるから皆心配しないでね★」

ぴんぽーん。(※注、始まりません)


「さぁ、人間ども〜、せいぜい逃げ回りなさい〜?
次は何処を壊してやろうかしら〜?あーはっはっはははっははは!!」

嫌な笑みを浮かべたまま、エヴァが楽しそうに笑う。
その下では、逃げまどう人間達の騒ぎが大きくなり大きな混乱を起こしていた。


「そこまでだぜ!!これ以上お前らの好きにはさせねぇぜ!!」
「!!」

突然、エヴァのモノでも、ワルギリア達のものでもない声が辺りに響く。
驚いて目を見開いたエヴァ達の前に次の瞬間二つの影が飛び出して来た!!

「岩を穿つ雫は龍の如く!うみねこイエロー!!」
「静かな決意は獅子の如く!うみねこグリーン!!」


「「輝く未来を守るため! 六軒島戦隊 うみねこセブン!」 」





「………………………はぁ?」

びしりとポーズまでつけて現れた2人の戦士に、エヴァが冷たい視線を送る。
その瞬間、「ひゅう」とどこからか冷たい風が吹いてきたような気がした。
周りで見ていた人々も突然現れた彼等に戸惑いと、不安を篭った視線を向けるだけだ。
…それも、ある意味仕方がないのかもしれない。
もちろん、エヴァも民衆も最近町を騒がしている怪物たちと戦っている戦士の名前は知っていた。
しかし、今の彼等は…。

「うみねこ”セブン”って何〜?あんた達2人しかいない〜?
噂では少なくとも4人居たって話だったと思ったけど〜?あんた達本当に本物なの〜?」
「うう…、戦人達と連絡が取れればなぁ……!」
「僕達よりも先に遊園地に来てるはずなんだけど…、何も連絡がないなんて…、心配だね。
無事で居てくれるといいんだけど……、でもそれよりも彼女をどうにかするのが先決だね。
僕達だけでも何とかやってみよう…!!」

互いに大きく頷きあって、グリーンとイエローは武器を手にエヴァに向き合う。
彼女達が自分に立ち向かう気であることを悟ったエヴァは、途端に大きな声で笑い出した。

「あーはっははははは!!あんた達二人だけでぇ〜?
このエヴァ・ベアトリーチェを倒すとか言っちゃうの?おかしいぃい!
…直ぐにその言葉後悔させてやるわ…!!身の程を知りなさい!!うみねこセブン!!!」
「「!!!?」」

エヴァが杖を振り上げ、大きく振る!
眩く光った彼女の杖から無数の星が飛び散り、目の前のレストランに襲い掛かった!!

ドドドドドドド!!!!

激しい音と共にレストランが崩れ落ちる。
同時に破壊された厨房から火の手が上がり、辺りの木に燃え広がった。
幸い最初の攻撃によって、既に辺りから人の姿は消えていたため、被害は建物だけだ。
しかし、このまま彼女の暴走を許していればいずれ人々に被害が出てしまうことは想像に難くない。
グリーンも、イエローも直ぐにでも彼女を止めないといけないことはわかっていた。
でも……!!

「あはは、どうしたの〜?私を止めるんじゃなかったの〜?
そうやってつ立っているだけじゃあ私は止められないわよぉ?ねぇ?うみねこセブン!!!」

何故か反撃をして来ないうグリーン達に
気を良くしたエヴァは何度も杖を振り、辺りを手当たり次第に破壊する。
彼女の放つ衝撃波を紙一重で避けながら、グリーンとイエローは悔しそうに眉を潜めた。

「グリーン!このままじゃ!!」
「わかってる、でも…彼女が空にいる以上僕達だけじゃどうにも出来ない…!!」

ぎりぎりと歯を食いしばりながら、グリーンとイエローはお互いにお互いの武器を握り締める。
イエローの武器はメリケンサック、そしてグリーンは足技を主体としている。
そう、魔女達のように空を飛ぶことが出来ない彼等達には空中を自在に舞う
エヴァを捕らえることが出来ないのだ…!!

せめてここに真里亜か戦人のどちらかだけが居れば、状況は大きく変わっていただろう。
だが、ここまでの大きな騒ぎになっているにもかかわらず、未だに彼等からは連絡すら来ていない。
考えないようにしても、嫌な予感がグリーンとイエローの頭を過ぎってしまう…!

「このままじゃ拉致があかないわねぇ〜…そろそろ、致命的な一撃をくらっちゃいなさい…!!」
「!!何をする気…!!」

にやりと今までで一番嫌な笑みを浮かべたエヴァが大きく飛び立ち、杖を天へと掲げる。
眩しいほどに眩く光るその杖に込められている魔力の量に気付き、グリーンとイエローは、はっと息を呑んだ。

「くすくす、私が気付かないとでも思ったのぉ?
さっきから逃げ遅れた人間どもがあの森の中の建物に逃げ込んでるでしょ〜?」
「え……?」

エヴァが指差したほうにあったのは森の中に僅かに見える礼拝堂の屋根。
あそこに人が逃げ込んでいた…?
一体…?誰が…?あそこに人々を誘導したというのだろうか…?
まったく身に覚えのないその事実に彼等は互いに顔を見合わせた。

「何を考えていたのか知らないけど〜、あんた達の目論見なんて
このエヴァ・ベアトリーチェ様のポップでキュートな魔法で邪魔してやるんだから★」
「やめろ…!!あそこに居る人達は関係ないだろう…!!」
「遅い!!自分達の無力を感じながらそこで指を咥えてみてなさぁ〜い!!うみねこセブン!!!」

エヴァが振った杖から、…光が爆ぜる。
大きな爆音と、衝撃波が彼女達を包む。
そしてその光から視界が戻ったその時には……、

そこには大きなクレータが横たわり、
森の一部を含め、礼拝堂は影も形もなくなっていた――。







【アイキャッチ】







ただ、目の前に暗い闇が広がっていた。

ああ、またか。
そうベアトリーチェは心の中で呟き、小さくため息をついた。

分かってる。
これは夢だ。
幼い頃から何度も、何度も見て、逃れられないいつもの夢。

何もない闇に、一人。
どこまで走っても、叫んでも。
いつだって誰も見つけることも、助けにも来て貰えないのだ。

ベアトリーチェはもう一度ため息を付くと、
早々に抗うことを諦めその場に座りこんだ。
この夢に閉じ込められてしまえば、出来ることなど何もないのだ。
何処まで行っても誰も居らず、自分を助けに来てくれる人なんて何処にも居ないのだから…。

「―――い、――!!」


「え……?」

その時、誰も居ないはずの暗闇に、確かに自分ではない誰かの声が響いた。
遠くから聞こえるその声が何を言っているのかは…、わからない。
それでも何故だかその声が自分を呼んでいる気がして、ベアトリーチェは立ち上がった。

それと同時に、何処まで行っても何も無い筈の空間に小さな光が生まれる。
暖かい温度を感じるその小さな光に、ベアトリーチェは必死に手を伸ばした――。





「……い、おい!大丈夫かよ…!お前…!!」
「うー?おねぇさん大丈夫…?」
「そなた達……」

ぼんやりとした視界が徐々に晴れ、赤毛の青年と、甘栗色の少女の像を形作る。
ほんの暫くの沈黙の後、ベアトリーチェは彼等がつい先ほど礼拝堂で出会った
青年達であること、そして突然襲ってきた地響きに、
他の客と共に彼等に誘導されるまま礼拝堂の地下に逃げ込んだことを思いだした。

エヴァの暴走に腹を立て、城へと向かって行こうとしていたベアトリーチェは
他の者よりもここに逃げ込むのが遅れてしまった。
そのためこの青年に無理やり押し込まれたと、
エヴァの魔法で礼拝堂が消滅したのはほぼ同時だったのだ。

眩い閃光が目の前で爆ぜたのと同時に、爆風で背後に飛ばされ…、
背後に鈍い痛みを感じた所までは覚えている。
どこかにぶつかって気絶してしまったのだろうか?
起き上がると、背中がまだずきずきと小さく痛んだ。

「……ここは、どこなんだ?妾達はどうなったのだ?」
「ここは、礼拝堂の地下。…上は城の上に浮かんでる奴の攻撃で消えちまったみたいだけど、
ここは相当丈夫に作ってあるから、他の人達と一緒にここに居ればもう安全だぜ?」

そう言われ、辺りを改めて見渡してみる。
薄暗い闇の中には自分よりも先に逃げ込んだたくさんの人々が
寄り添っている姿と、よくわからない機材が置かれているのが見えた。
礼拝堂の地下にこんな場所があったなんて……。

よく見知っていると思っていた遊園地の中に思わぬ場所を見つけ、
ベアトリーチェは小さく息を呑んだ。

「うー…、戦人…、譲治おにぃちゃんと朱志香が待ってる…」
「ああ、そうだな…。そろそろ行くか…」
「そうだなって…、どこに行くのだ……!」

さっきまで見ていた夢の所為で弱気になっていたのかもしれない。
また一人にされることを恐れて、ベアトリーチェは思わず戦人と呼ばれた青年の服の袖を掴んだ。
急に袖を掴まれ、戦人が驚いた表情を浮かべる。
その表情にベアトリーチェもはっと我に返った。

自分は…、何をしているんだろうか…?

無限の魔女ともあろうモノが、夢に怯えるなんて情けない。
その上、初対面の人間に助けを求めるなんて…、ありえないではないか。

相手は人間。
自分達とはまったく違う、
決して交わることのない存在なのだから…。

自嘲気味に笑って、ベアトリーチェは直ぐにその手を放す。
そして今自分がしてしまった行動をなかったことにするために、
直ぐにいつも浮かべている不敵な笑みで相手を見返してやろうとした。

だけど…、それは叶わなかった。

「!!………何をする!そなた……!」

次の瞬間、自分の頭に乗せられた暖かい手に驚いてしまったから…。


「いっひっひ、そんな泣きそうな顔すんなよ?美人が台無しだぜ〜?」
「!!…べ、別に泣きそうな顔なんてしておらぬ…、
…それよりも気安く触るな!こら!頭を撫でるでない…!!」

自分の心の中を見透かされたような気がして、
ベアトリーチェは恥ずかしそうに少し顔を赤らめながら視線をずらす。
どこか尊大な印象を受けていた彼女の意外な一面に戦人は驚く。
子供のようにころころと表情を変える彼女が急に微笑ましくなって、
戦人もう一度小さく笑うと彼女の頭を何度も撫でた。

けらけらと、楽しそうな二人を見ていた真里亞もつられて笑う。
笑われたことに気付いたベアトリーチェは恥ずかしそうに顔を真っ赤にして口篭った。

そんなことをしているうちに、
いつの間にかベアトリーチェ心の中に巣食っていた暗い感情は消えていた。
言葉に出来ない不安も、もうない。
気を失っている間も、ずっと苦しそうな表情を浮かべていた
彼女の瞳の中にあった怯えの色が完全になくなったことに気が付いた戦人は、
とても優しい目をするともう一度だけそっとその頭を撫でた。

「…大丈夫だ。直ぐに収まるさ、……だからもうそんなしょぼくれた顔すんなよ?」
「しておらぬ!しておらぬ!!ええぃ!そなたしつこいぞ!!」
「そうか〜?まぁ、一人でそんな顔してないで困った時はいつでも呼べよ?
白馬に乗って助けに行くぜ?いっひっひ」
「うー!真里亞も!真里亞も呼んでね!真里亞もお姉さんのこと守るからね!」
「――!!………」

「だって真里亞はうみ……」と何か言いかけた少女の口を戦人が慌てて塞ぐ。
何を言いかけたのかはわからなかったが、ベアトリーチェは特に気にしなかった。
…それどころじゃなかった、と言った方が正しいかもしれない。
トクン、と暖かい気持ちが胸に溜まっていく。
今まで感じたことのない感情が溢れて、気分がこれ以上ないないぐらい高揚していた。

「戦人…?真里亞…?」
「ん?そうだぜ?…って、そう言えばお前の名前は?」

噛み締めるようにその名を呼ぶ。
名前を呼ばれ振り返り戦人はふと、彼女を呼ぶ名を知らないことに気が付いた。
握手と共に尋ねられたソレにまたベアトリーチェの心臓が跳ね上がる。

ソレは、彼女を認識するためにに必要なもの。
今まで問いかけられたことのなかったその問いが、涙がが出そうなぐらい嬉しかった。



「!わ、妾は―――、」

手を伸ばす。
差し出された手を取ることにも、彼の問いに答えることにも、…迷いはなかった。


いい意味でも、悪い意味でも。
この時取ったこの手が、いずれ彼女の運命を大きく変える事になるとは知りもせずに――。




*******

「ぐっ――!!」

エヴァの放った衝撃波を避けきれず、グリーンの皮膚が浅く消える。
苦悶の表情を浮かべたグリーンに、城の中から一部始終を見守っていた紗音が息を呑んだ。

「ああ…、ワルギリア様…!お願いです!私達に出撃許可をください…!」
「……出来ません。確かに、エヴァの暴走は許せません。
でもそれ以上に”影”であるあなた達を大勢の人々の前に出すわけにはいきません…!」
「でも…!!このままでは……!!」

泣き出しそうな声を上げる紗音の肩に、嘉音の手が乗せられる。
淡々とした表情で紗音を見つめるその瞳には僅かに彼女を諌める色が混じっていた。

「姉さん…、どうしたっていうの?ワルギリア様の言う通りだ。
僕等は”影”。表だって出るわけにいかないことぐらいわかってるだろう…?
それに…、もしもこのままエヴァ様が彼らを殺してくれれば僕等にとっては願ったり叶ったりじゃないか…」
「それは…、そうだけど……!」

嘉音の言葉に言い返すことが出来ず、紗音が「さっ」と表情を曇らせる。
分かっている。嘉音の言っていることの方が正しいのだ。
うみねこセブンは、自分達の計画を邪魔する敵だ。
たとえ2人だけだとしても、その数を減らせるならば喜ぶべきなのだ。
だけど……!!

「……譲治先輩…」

打つ手がないとわかっていながらエヴァに立ち向かう
グリーンの姿が、…いつも優しい笑みを浮かべてくれるあの人に、何故か重なる…。

彼らの無事か、それとも敗北か。
一体何を願えばいいのかそれすら分からないまま、
紗音はぎゅっと強く目を閉じたまま、手を胸の前で握り合わせた。



「あーはっはは!無駄よ、無駄〜。何をやってもあんた達の攻撃は私には届かない!
結構楽しかったけどこれぐらいで終わりにしましょう?さようならぁあ!うみねこセブン!!!!」
「「!!」」

今までわざと直撃を避けて魔法を放っていたエヴァは楽しそうにくすくすと笑うと、一際力強く杖を掲げた。
目を開けて居られないほど強い光が辺りを包み込む。
ワルギリアですら息を呑むほど強い魔力を、エヴァが片手で大きく振り上げる。
まるで悪戯を仕掛ける子供のような、無邪気な笑顔。
まったく罪悪感と言うものを感じない無邪気その笑みを浮かべたまま、
エヴァは幾人もの人の命の火を完全に消し去ってしまう力を持つその魔力を、……解放した!!




「……おっと、駄目だぜ?全然ダメだぁああああ!!これ以上、てめぇの好きにはさせてねぇぜぇええ!!」


キィイイイイイイイ!!!


「なんですって!!!?」

咆哮と共に飛び出して来たレッドの前に薄い壁が出来る。
絶対無比の威力を誇っていたはずのエヴァの魔力が、
その薄い壁に触れた瞬間、高い音を立てて四方に弾け飛んだ!!
完全に威力を殺がれた魔力がどこにも当たることなく掻き消える。
目の前で起きた光景が理解できず、エヴァが驚愕の表情を浮かべる…!

「待たせたな!!グリーン、イエロー!!
そこのねぇちゃんよ…、覚悟しな?俺達が来た以上はもう好きにはさせねぇぜ!!」
「うー!!そうだよ!世界の平和はピンク達うみねこセブンが守るよ!!」
「レッド…、ピンク……!!」

ほっとした表情を浮かべたグリーンとイエローがその場に崩れ落ちる。
ここまでの戦いで既に彼らはぼろぼろだった。
レッドは彼らに向かって笑みを浮かべると彼らを自身の背に庇い、エヴァと向き合った。


「何よ…、2人増えたからって関係ないわ…。私には誰も勝てないんだからぁあああ〜!!」

突然現れた彼らに自分のとっておきの攻撃を消されたエヴァがぎりぎりと歯を食いしばる。
苛立ちを隠そうともしないまま、エヴァが杖を振り上げ、魔法を放つ。
しかし、そのどれも立ちふさがったレッドの壁に遮られ、掻き消された!!

「いっひっひ、そんなんじゃ全然駄目だぜ?今度はこっちの番だよな?……ピンク!!」
「うー!!了解!行くよ〜〜!!レッド!!」

レッドの呼びかけに答えて、ピンクが飛び出る。
レッドは銃を、ピンクは杖を。
背を合わせたまま、自身の武器を構えた彼らは互いに不敵な笑みを浮かべる!!

「これが俺達の必殺技!食らいやがれ!!」
「うー!!これが私達の必殺技!「「スターダストショット!!」」
「!!」

レッドの放った蒼き弾丸に、ピンクの杖から零れ落ちた無数の星が集まる!!
一つの弾丸となった二つの光は眩く光ると、捕らえきれない速度でエヴァへと襲い掛かった!!

「!!!!!そ、そんなぁ…!この私がぁあああ!!!」

聖なる二つの光がエヴァを包み、炸裂する!!
黒き魔法しか持たない彼女に彼らの聖なる光を防ぐ術はない!
杖を構え、彼らの聖なる光に耐えようとするエヴァ。
しかし最後の悪あがきも直ぐに押し負け、彼女は断末魔を残して光の中へと消えて行った――!!


*******

【エピローグ】

辺りの騒動が収まり、ベアトリーチェが城の方へと帰って来たのはもうすっかり辺りが暗くなった頃だった。
一緒に隠れていた人々はもう随分と前に先に出て行ったのだが、
彼女だけはぼんやりとその場に座り込んでいて、戻ってくるのが遅れてしまったのだ。

そっと、撫でられた頭に手を置いてみる。
それだけで何故だか胸が暖かくなるような気がした。
戦人と真里亞、彼らの明るい笑顔を思い出すそれだけで、何だかこっちまで楽しい気分になる。

自分の中に生まれた感情の正体を理解できず、ベアトリーチェ悶々と思考を巡らせた。
ただの自分達の邪魔をする存在だとしか思っていなかった
人間に、別の感情を擁いていることにベアトリーチェは驚く。
しかし、それ以上に…その感情を嫌がっていない自分にベアトリーチェは驚いていた。

「うー!!ねぇ、まだかな〜……あ、戦人!ベアトだ!!ねぇベアト〜!!」
「おお、やっぱりお前も見に来たのか?来いよ!こっち特等席だぜ〜〜!」
「!!そなた達……」

今の今まで考えていた相手が突然現れたことに驚いてベアトリーチェが目を見開く。
突然のことに上手く思考が回らない。
どうしたものかとあわあわと考えているうちに、飛び出して来た真里亞に手を引かれ、
彼らが居た人ごみの中に連れ込まれてしまった。

「何だ?この人ごみは?そなた達、ここで何をしておるのだ?」
「なんだ?お前も見に来たんじゃないのか?
いっひっひ、良かったな。今日のメインイベントの始まりだぜ〜!」
「?だから何だと………!!」

突然鳴り響いたファンファーレと共に辺りが色とりどりの光で包まれる。
楽しそうな音楽と共に現れたイルミネーションで鮮やかに彩られた車や、
キャラクター達に、待ち望んでいた観客達が歓声を上げた。

「うー!!凄い!凄い…!!」
「良かったな、真里亞。
…結局、譲治の兄貴と朱志香は大事をとって見に来れなかったのは残念だけど…、
まぁ、ベアトも居るし、今日は良しにしろよ?」
「うー!いい!譲治お兄ちゃんと朱志香とはまた次に見るからいいの!
ベアトも一緒に見よう?今度は皆で一緒に見よう?!うー、うー!」

「…………」

満面の笑みを浮かべた真里亞がベアトリーチェの手にまとわり付く。
楽しそうな笑顔を向けられて、手から暖かい体温が伝わって来て、……悪い気はしなかった。

…この気持ちは何なんだろう。

トクン、と自分の心の中に暖かい気持ちが溜まっていく。
初めて感じるこの感情の正体は……まだ、わからない。
それでもこの暖かくて、心地の良い感情に今だけは身を任せていたいと、
ベアトリーチェは真里亞の手を強く握り返し、彼らの笑顔に満面の笑みで応えた――。












「……まったく、今回のあなたの行動にはほとほと呆れましたよ、エヴァ」
「…………す、すいません…」

その頃、少し離れた場所ではワルギリアに正座の上お説教をされているエヴァの姿があった。
昼間の暴走が嘘のようにエヴァはうな垂れ、素直にワルギリアの言葉に耳を傾けていた。
それもうみねこセブン達の攻撃から間一髪の所でワルギリアに救われたという引け目と、
これ以上何かすれば「朝食が全て鯖になる魔法をかける」と脅されている所為でもあるのだが。

ふるふると悔しさで小さく震えるエヴァを見てワルギリアが深いため息を吐く。
この子は本当に自分がしでかしたことの大きさを分かっているのだろうか?
相手はうみねこセブン。
今までこちらの刺客を何人も破ってきた相手だ。
こちらの援護を出せない状態でたった一人で突っ込んで行けば、
本当に彼女自身の身すら危なかったかもしれないというのに……。

「取り合えず、今日の所はこれぐらいでいいです。
帰りましょう?エヴァ?あなたの帰りを皆待っていますよ?
もう、このような無茶なことはしないでくださいね…?」
「!!せ、先々代様……!!」

思いかげず掛けられた優しい言葉にエヴァの目が潤む。
ワルギリアは彼女に優しい笑みを浮かべるとそっとその肩に手を置いた。

「…遊園地をこのままにしておくわけにはいきません。
今回のことは完全にこちらに非がありますし、蔵臼さんに私から復旧の全面協力を伝えておきました。
……ソレ関係であなたには明日から一つお使いを頼みたいのですが…、できますよね?」
「は、はい!私に出来ることでしたら…!!」

「そうですかw」とワルギリアがにこにこと楽しそうな笑みを浮かべる。
彼女は満面の笑みを浮かべたまま、魔法で取り出した一つの包みをエヴァへと手渡した。
意気揚々とエヴァが開いたその包みから出てきたものは……。


「……せ、先々代様…、これは…」
「やってくれますよねwあなたには拒否権なんてありませんよ?エヴァ?」

僅かに開いた目でワルギリアがエヴァを睨む。
その表情に最早何も言えなくなったエヴァは小さく「はい」と呟いた…。


*******


「べ、別にあんた達を待ってたわけじゃないんだからね〜!!さっさと注文しちゃえば〜〜!!」

ドン、とウェイトレスとは思えないほど乱暴な動作で、
水を置いた少女が顔を真っ赤にしたまま厨房へと引っ込む。
その少女に見覚えがないことに気が付いた戦人達は首をかしげ、隣に座っていた蔵臼に視線を向けた。

「ふっふっふ、このレストランは万年人手不足で困っていたからな。
ワルギリアさんに頼んで新しいバイトを紹介してもらったのだよ!」
「……でも、あの態度はねーぜ。ウェイトレスとは思えないぜ?父さん…」
「そんなことはないぞ〜。あのツンとした態度が受ける時代が来る!絶対に来る!
彼女を看板娘として私はこのレストラン更に発展させてみせるぞ?!朱志香!はっはっはっは!!」

自信満々に笑うクラウスに朱志香達は顔を見合わせ、「そういうものだろうか?」と眉を潜め合う。
新たなメンバーを加え、再出発を始めた「GO田のマジカルレストラン」。
蔵臼の目論みどうりこのレストランが大人気となるかは……、まだ定かではない。


【エンディング】


《This story continues--Chapter 8.》




《 追加設定 》
「スターダストショット」<<合体技1〜レッドとピンク〜>>
レッドとピンクの連携技。
レッドが放った「蒼き幻想砕き」にピンクの杖から現れた無数星を合わせる必殺技。
蒼き幻想砕きによる、幻想側に対する攻撃に加え、ピンクの星という物理攻撃を+。
精神的にも、物理的にも効く。


●「GO田のマジカルレストラン」の従業員にエヴァ(バイト)が追加されました♪

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