『今回予告』
テレビを見ているみんな!
いいか? テレビを見るときは、部屋を明るくして、離れて見るんだぜっ♪

私の名前は朱志香。泣く子も黙る、右代宮財閥の令嬢さ。

お祖父様の指示でうみねこセブンになってから、私の拳はバーニング!
悪は滅びるってのが世の常だもんな。
何度襲ってこようと、私が全部ぶちのめしてやるぜっ。

この前、学園が襲われたんだ。譲治のアニキは、悪の組織が私たちの正体を暴こうとしているんじゃないかって疑ってる。

それなら、作戦立てて騙してやろうぜ!
私に任せておきなってw

最近、気になる子がいるんだ。嘉音君って言うんだけど、どうしようもないショタっ子でさ。
男の子っていうのは、もっとしっかりしなくちゃいけないよな。
まあ、戦人みたいな変態も困るけどな。

あれ?あそこにいるのは嘉音君?
何でそんな所に?
まさか・・・嘉音君・・・ いや、そんなことはないよな・・・





ここは『ハロウィーン・ミラー・ハウス』

うみねこセブンの司令塔である。
メンバーが集結している。作戦会議だ。

譲治が、疑問に思っていることを口にする。

「・・・やっぱり、おかしいよ。なぜ、僕らの『うみねこ学園』が襲われたんだい?彼らの目的は何なんだい?疑問だらけだよ。」

「確かにな。不特定多数が集まる遊園地や、街中に出現って感じじゃなかった。学園の校内に、突然山羊さんが発生したな。」

戦人も同調する。
それにあの相手・・ガァプとか言ったか。譲治はそのときのことを思い出し、少し恐怖する。
あれは間違いなく、『ファントム』と名乗った敵の中核の一人に違いない。

「これは僕の推論だけど・・・」

一同が譲治の発言に注目する。

「奴等は、うみねこ学園に、僕ら『うみねこセブン』の正体を暴く何かがあると睨んでるんじゃないかな?だから、校内に山羊さんを放って、どれくらいの時間で僕らが登場するのかを調べたかったんだ。僕らはそれに気づかず・・」

「あー、なるほど。私達はあっという間に駆けつけた。そして、私たちの能力と構成を見た後に・・・ガァプは姿を消したってわけか。」

朱志香が気付く。

「その可能性は高いと思うんだ。僕達は、まんまと相手の術中にはまったのさ。これからは、もっと慎重に行動してもいいと思う。僕たちの正体を知られるのはマズイ。」

「うー。でも、慎重ってどうするの?」

真里亞が口を挟む。
これに対しては、いい案がなかったようだ。困ったように、譲治が首をすくめる。

朱志香は、ニヤリと笑う。

「なあ、アニキ。コソコソ逃げるのは感心しねーぜ。私に考えがあるんだ。みんな、乗ってみないかい?」

「朱志香ちゃん、聞かせてくれないか?」



【オープニング】







ここは『Ushiromiya Fantasyland』の中央の城の地下会議室。


円卓には、ガァプ・ベアトリーチェがいた。
悠然と座る二人の横に、彼はいた。

彼の名前はロノウェ。大悪魔であり、ファントム随一の実力を持った『暗黒将軍』である。
そんなロノウェの前に、恭しく跪く2人の影があった。

嘉音と紗音だ。

「・・・以上で報告を終わります。やはり、うみねこ学園内は怪しいと思います。」

嘉音の言葉に、紗音が少しビクつく。
不安な目を嘉音にぶつけ、付け足した。

「し、しかしまだ調査中ですので、はっきりしたわけではありません・・」

嘉音は少し不満そうな顔をしかけたが、恩師ロノウェの前で粗相のないように、冷静を保った。
報告を聞いたロノウェ。しばし考え込んだ。

「どうやら、私どもにたて突く不届きものは、あと少しで捕まえられそうですな。さて。7姉妹の誰かに偵察でもさせましょうかな?」

ちらりとベアトリーチェの顔をうかがう。
そう。譲治の憶測は、的を得ていた。ロノウェは、嘉音・紗音の2人をうみねこ学園に送り込み、内偵を画策したのだ。そしてどうやら核心に近づいた。

「・・・ロノウェ。お主が自分の目で確かめてくるがよい。」

退屈そうに、ベアトリーチェが呟く。
ベアトリーチェも、近衛に囲まれた生活にうんざりしているのだろう。ロノウェを外に出し、つかの間の休息を味わいたいに違いない。

ロノウェもそれに気付き、肩を竦める。

「・・・私自ら偵察にですか?ぷっくっく。でたらめな報告になるかもしれませんよ?」

それには耳を貸さず、ベアトリーチェは続ける。

「さっさと偵察してくるがよい。嘉音・紗音よ、ロノウェの作戦の手助けを。」

「「はっ。」」




ここはうみねこ学園。マンモス校だ。
右代宮金蔵の出資で作られたもので、孫たちはここに通っている。

高等部の3年Cクラス。
ここは朱志香と戦人のクラスだ。

最近、2人の転校生が来た。

一人は清楚な美人。クラス、いや高等部でも話題沸騰だ。名前を紗音と言う。
もう一人。目立たない少年がいる。彼の名前は嘉音。控えめ・・・と言うより、人との接触を拒んでいるように見える。

そんな嘉音が今、窮地に立たされていた。

「なあ〜、嘉音君さぁ〜。ちょっとくらいいじゃんか。」

彼は今、体育館の裏に呼び出され、あまり育ちのよくない女の子達に囲まれていた。
簡単に言えば、ショタっ子嘉音君とお近づきになりたいらしい。整った顔つき、憂いを帯びた表情。母性本能をくすぐられるタイプなのだろう。

リーダー格のスケバン。一歩近づく。
一歩下がる嘉音。とうとう、壁まで追い詰められた。
溜息をついて、嘉音は考え事をする。

(ああ、面倒だな・・・こういうの。どうして世間の人間はそんなに干渉したがるんだ・・・これだから人間は・・・早く調査を終わらせて、自由になりたい・・)

もう、嘉音は諦めた。素直に従うことにした。
どうでもいい。早く終わらせて、この窮屈さから開放されたい。

「わかりました・・・いいですよ。」

きゃああああああ//
黄色い声が体育館裏にこだまする。育ちが悪くても、こういうところは女の子。
しかし、女の子たちの願いは叶わない。

「おっと、そこまでだぜっ!」

黄色い声を出したのが裏目に出た。朱志香がその声を聞いて駆けつけてきたのだ。
声に反応して、面倒そうに振り返ったスケバンの表情が変わる。

「げっ。ジェシ!!」

どどーんと仁王立ち。清々しいほどに正義。
生徒会長であり、人気絶大。成績は・・・そうでもないが。

(あ・・・あれは同じクラスの。右代宮朱志香さん。)

「お前らも暇なヤツらだな。イタイケな転校生なんか掴まえてないで、さっさと園芸部の活動でもしてこいよ。先生に言われてただろ?」

(いつも明るい。自由奔放。)

「ちっ。ほんとうにジェシは・・・ああわかったわかったようっさいな。か、嘉音君〜またな〜」

どうやら、女生徒達は朱志香には頭が上がらないらしい。
すごすごと、未練をたらしてその場を後にした。
朱志香は彼女たちを目で追った後、くるりと嘉音に向き直る。

「よっ。嘉音君。愛の告白を邪魔しちまったかな?学園長がお呼びだぜ。さ、行こうぜ。」

明るく振舞う朱志香。ついてくるように促し、嘉音もそれに従う。
恩着せがましくもなく、偽善に満ちたものでもない。ごく当たり前に行動した感じだ。
嘉音は、疑問に感じる。世の中の人間は損得勘定で生きているはずなのに、この人は違うのだろうか。

「あ、あの・・・」

不満そうに、朱志香が嘉音を見る。混じりけのない彼女の目に、嘉音は少しドキっとする。

「私の名前は『あの』じゃないよ?嘉音くん。『朱志香』だぜ?朱志香って呼びなよ。」
「あ・・はい。朱志香・・さん。」

そう言っただけで、どもってしまった。ふうっと溜息をつき、朱志香は歩き始めた。嘉音も後を歩く。
朱志香は内心辟易していた。男はもっとこう、頼もしくしててほしい。

校内を歩くと、朱志香はどこでも声をかけられる。
嘉音にはそれが眩しかった。彼女は太陽のようだ。自分はたとえるなら月。交わらない両者。
人見知りもするし愛想も悪い自分と違い、彼女は誰とでも仲良くできる。こんな自分にも。

僕には使命がある。孤児として施設に入れられていた姉さんと僕。それを救ってくれたのはロノウェ様。あの有名な須磨寺学園付属高等学校に入れてもらえた。そこで僕たちは、いろんなことを勉強した。その見返りとして、僕と姉さんは、ロノウェ様の信じる道を応援させてもらっている。

「ジェシ〜、噂の嘉音くんとデート?羨ましいwww」
「ち、ちがう!!変な事言うなww理事長の所までハニーを連れて行くだけさw」

キャアアア//
黄色い声が響く。

ああ、朱志香さんは本当に人気がある。須磨寺時代に、そんな生徒はいなかった。
みんな、ロノウェ様の教え通りに活動した。それが美徳とされていたし、今でも僕は教えを守っている。

「朱志香さん・・その・・・女生徒というのは、おしとやかで男を立てるものでは?」

前を歩く朱志香に、嘉音はおずおずと切り出す。そんな嘉音の声に、朱志香が答える。
曇りのない目で。陰りのない声で。

「嘉音君。君は、何のために生きてるの?」

え。。
予想もしない言葉に、戸惑う嘉音。

「私は私。間違っていると思う事は間違っていると言うし、楽しい事は楽しみたいの。好きな事に打ち込みたいし、嫌いな事はやらねー。それが私さ。」

「・・・そうですか。僕にはピンときません。」

口を尖らせて、朱志香が言う。

「あのさー。嘉音君には、夢とか自己主張とかないわけ?この朱志香に聞かせなよ。」

嘉音はどもる。夢か・・・
夢なんて、あったかな・・・でも

「夢ではないですが、やりたい事はありますよ。今、そのために活動しています・・」

もちろん、嘉音はスパイとしてここに来たことを指したが、朱志香には別の意味で捉えたようだ。少し意外そうに、ちょっとうれしそうな顔をする。

「へ?・・・そ、そうなんだ。ちょっと見直したぜ。やりたい事が叶うといいな。応援しているぜ!」

嘉音は、少しだけ心に痛みを感じた。なんだろう。この痛み・・
僕は、この学園にスパイとして潜入している。姉さんと共に。それが終われば、僕らは自由だ。
やりたい事もはっきりしてるじゃないか。

なのに。。。
なぜか、心は晴れなかった。

ちらりと、時計を見る。15時。そろそろだ。時刻は15時きっかり。
ロノウェ様の計画が遂行される。


「メエエエエエエエエエエ!!!」


校内のいたる所で、山羊さんが湧いた。
そして、逃げ惑う生徒たち。校内はパニックになった。
散り散りになる生徒。2人きりになった嘉音と朱志香の前に、2匹の山羊さんが現れた。


【アイキャッチ】







逃げそびれた2人。爛々とした目を光らせ、2匹の山羊さんがジリジリと2人を隅に追いやる。
朱志香は焦っていた。ここには一般人(嘉音)がいる。変身は出来ない。生身で凌ぐしかない。
と、目線の先に掃除箱を見つけた。一瞬のうちにたどり着き、中からデッキブラシを取り出す。

「嘉音君、ちょっと下がってな!!君は私が守る!!生徒会長舐めんなよ!!!」

隆々とした筋肉。漆黒の体。それに動じない朱志香。
嘉音は、身を潜めた。それを確認して、山羊さんの注意を引くかのように、挑発する。

「さあおいで、遊んであげるわ鉈女ってか。どこからでもかかってきやがれってんだ!」

某サウンドノベルの決め台詞を言い、2匹を違う方向へ誘導しようとする。もちろん、倒せるわけがない。注意を引いて、隙を見て逃げ出すつもりだ。

「よっと。」

山羊さんAの、のろい一撃を屈んでかわし、デッキブラシでスネを強打!!そのまま柄を顎にクリーンヒットさせる。
一瞬ぐらついた山羊さんA。朱志香は自分の背後にいる山羊さんBの股下をかいくぐり、間髪入れずにローリングソバット!!

山羊ざんBはよろよろと、山羊さんAになだれかかった。

「今だ嘉音君!!逃げるよ!」

嘉音の手を引っ張り、その場を後にする。
全速力で走る中、嘉音が戸惑いながら話す。

「あ、あの・・・さっきのローリングソバット・・」
「んあ?かっこよく決まったぜw爽快だなっ!!」

「いやその・・・スカートでやらないほうがいいと思います。。。」
「・・・・」
「・・・・」

「バ、バカ!!どこ見てんだよ!!」




その頃、他のうみねこセブンは、変身せずに生徒を体育館に誘導していた。と言うのも、山羊さん達が正門・裏門を塞いでいたからだ。

「譲治の兄貴が睨んだ通りかもしれねぇな。完全に『あぶり出し』っぽさを感じるぜ。」

戦人は、山羊さんたちの行動が「攻撃」以外にあることを感じていた。のこのこと変身して出て行くわけには行かない。

「うー。じゃあ、朱志香お姉ちゃんの言ってた作戦を開始しなきゃ。」

合流した真里亞が提案する。
実は、うみねこ学院には正門・裏門以外にも出入りできる秘密の道がある。遅刻常習犯の朱志香が作った、秘密の場所だ。
そこからこっそり外に出て、門を正面から突破。いかにも外から登場したかのように見せようというのが作戦なのだ。

「・・・そうだね。引っかかってくれれば御の字。朱志香ちゃんとは連絡がつかないけど、とりあえずその場所まで行こう。」

譲治が決断した。




「よし、ここまで来れば大丈夫かな・・」

荒い息をしながら、朱志香と嘉音は体育館近くの音楽室前まで来ていた。校外への抜け道はすぐ近くだ。

「体育館にみんな避難してるみたいだな。とりあえずそっちに行こうぜ。」

朱志香が駆け出す。
その時だった。

一体の山羊さんが、朱志香の「横」から襲いかかってきたのだ。嘉音は瞬時の判断を迫られた。

ロノウェの指示で、山羊さんは生徒に危害を加えないようになっているはずだった。
しかし、目の前で朱志香に襲い掛かろうとしている山羊さんのスピード・攻撃位置。どう見ても朱志香にダメージを与えるとしか思えない。そう。山羊さんは、ロノウェの指示を無視したのだ。

「え、やべ・・・」

完全に不意を付かれた朱志香。彼女の目は、スローモーションのように近づいてくる山羊さんの隆々とした右腕を見ているしかなかった。残り3m・2m・1m。

だから、余りにしっかり見すぎていて、次に何が起きたのかも、スローモーションのように見ていた。

嘉音が、自分と山羊さんの間に割り込み、山羊さんの隆々とした右手を抱え込むように掴む。その右腕をぐいっと下方向に捻じ曲げ、嘉音は山羊さんの下側に入り込む形となった。
右腕を抱えたまま、自分の背中と腰で山羊さんの体重を全身に受ける。間髪を入れず、腰をはねる嘉音。山羊さんの突進力を殺さず、更に腕・背中・腰のすべてを使い、華奢な体の全力を山羊さんにプラスしたのだ。柔道で言えば「一本背負い」

だが、一本背負いなんて生易しいものではない。相手の力を一切殺さず、純粋に自分の力をすべて送り込む。一切無駄のない、しなやかな動きだった。

ドォォン!!!

山羊さんは、反対側の壁まで吹っ飛び、激突した。
朱志香は、その一部始終を見た。自分が「剛」だとすれば、彼は「柔」だった。

「よかった。間に合った。」

彼にとって、これは賭けたっだ。体術は習っていたけれど、実践は初めてだ。良かった。上手くいった。安堵した嘉音。一方朱志香は・・・

「嘉音君・・・・」

嘉音は、朱志香の視線に気付く。

「・・・かっこいい・・・」

やべ・・完全に嘉音君に惚れた・・・ショタっ子のくせに、やるときはやるんじゃん。って!!いかんいかん。何を考えてるんだ私は!!い、今は緊急事態。
ととととにかく逃げ出さなきゃ。

まだ膝をついている嘉音を気遣う余裕もなく、朱志香は走った。
恥ずかしくて、この場を去りたかったのだ。どんどん距離が空く二人。その時だ。


「メエエエエエエエエ!!!!!!」


壁に激突し怒り狂ったた山羊さんが、猛然と朱志香に突進を始めたのだ!!
朱志香は気付いていない。

慌てた嘉音。体制を建て直し、朱志香と山羊さんを追いかける。
しかし、山羊さんの能力はすごかった。走れば走るほど、距離は遠のく。そして、その分、朱志香と山羊さんの距離は縮まる。

太陽のような朱志香さん。こんな自分にまで、優しくしてくれた朱志香さん。
夢はあるのかと、初めて僕に聞いてくれた朱志香さん。

もう一歩。もう一歩だけでいい。一瞬だけでいい。僕にもう一歩だけ前に進めるだけの力が欲しい。
いや、この手が、もう少しだけでいい。もう少しだけでいいから伸ばせる力が欲しい。
ちょっとだけでいい。ちょっとだけでいいから、僕に、あの山羊さんの軌道を変えられるだけの力があれば。



僕は初めて願った。



「朱志香!!伏せて!!」



僕に力を。






「・・・むっ?」

ここは、うみねこセブン基地本部、長官室。

金蔵は、コアの異変に気付く。

今までにない光が、箱を照らした。通常は光として認識できない色。黒。
その黒色に、コアが光り輝いているのだ。

戦士としての資質と、強い意志。二つが揃わないと、コアは反応しない。

「白に続き、今度は黒か。一体、何が起きている?」




「朱志香!!伏せて!!」

朱志香は、嘉音の声で、瞬時に身を屈めた。条件反射だ。
屈んだ朱志香の上を、山羊さんの上半身が飛んでいった。それは壁にぶつかることなく、蝶となってこの世から消えた。振り向くと、そこには山羊さんの下半身が。その下半身も、蝶となって消えた。

「はぁ。はぁ。」

後には、息を切らした嘉音が立っている。
剣のような物を持っていた気がしたが、もう一度見ると消えていた。気のせいか。

「か、嘉音君・・・何があったの?」

嘉音は答えられなかった。自分でも、何が起こったのかよくわからない。
わかったこと。それは、朱志香の安全が確保された事だ。

「よくわかりません・・とにかく山羊さんは消えました。この隙に安全な場所に移動しましょう。ここで分かれましょう。僕達には行くところがある。」

そういうと、颯爽と嘉音は走り去った。
後姿を、朱志香はボーっと見ていた。いや、見ていたのではない。見惚れていた。

「嘉音君・・・すごい。。ちょっと見直しちゃったぜ。」

嘉音が自ら去ってくれた。ちょっと残念だったが、今は使命が先決だ。譲治に連絡をする。
連絡はすぐについた。もうすぐ、体育館裏に到着するそうだ。

「ふー。何はともあれ、作戦開始だぜ。にゃろう、借りを返してやるからな!」




譲治・戦人・朱志香・真里亞が体育館裏にあるフェンスの穴からこっそり外に抜け出した頃、嘉音と紗音は正門・裏門にたどり着いていた。そう、出入りする者の有無を確認するためだ。

校舎の屋上には、ロノウェがいる。

「ぷっくっくっく。さあ、出てくるがいい。うみねこセブンとやら。そろそろ15分。嘉音・紗音の報告通りなら、登場する頃ですな。」

優雅に、宙に浮いたソファーに座り、紅茶を飲む。
校舎内から湧き出る、恐怖のオーラ。そのオーラが彼には心地いい。
渋々偵察に来たロノウェだったが、十分に楽しんでいるようだ。

「む?あれは・・・」

ロノウェは、何かに気付いた。
裏門だ。


「え・・・」

裏門にいた嘉音は、目を疑った。
颯爽とうみねこ学園に向かってくる面々。

レッド・グリーン・イエロー・ピンク。まばゆいばかりに光り輝くオーラに包まれ、うみねこセブンが登場したのだ。

「どうなってるんだ。なぜ外から?」

姉さんも言ってた。前回は裏門をあまりチェックできなかったって。
じゃあ、うみねこ学園とは関係がないのか?わからない。

嘉音の思考とは関係なく、うみねこセブンは近づいてくる。



「「「「輝く未来を守るため! 六軒島戦隊 うみねこセブン! ただいま参上!!」」」」



「くぅ〜っ♪決まったぜ。何回も練習した甲斐があったなイエロー。」
「・・・レッド、そういうことは内緒にしておくもんだぜ。」

「もう、あんな恥ずかしい練習は懲り懲りだよ・・・」
「うー。練習、もっとするーw」

相変わらず緊張感のない登場。いや、緊張と恐怖を掻き消すためにはしゃいでいるのかもしれない。

ここで、イエローが新機能を発揮する。
「へっへっへ。新技術、『イエロー・アイ』スコープ=オン!!」

ピコーン。

※説明しよう。『イエロー・アイ』は、簡単に言えば組み込み式の双眼鏡である。

敵の位置を正確に把握する。
近くにいる敵ではなく、遠くにいる敵を察知するには便利な機能だ。

「グリーン。屋上に髭のおっさんがいるぜ。暢気にお茶飲んでやがる。たぶんそれがボスだ。」

一気に緊張感が走る。どんな敵かは分からない。だが、行くしかない。

「ありがとう、イエロー。みんな、一気に行くよ!!」


「「「ラジャー!!」」」



「うおおおおおお!!!」


さくたろうに乗ったピンクが、裏門よりはるか高くジャンプし、飛び越える。
見上げた山羊さんを、イエローとグリーンが打ちのめす。近づいてこようとしている山羊さんは、レッドが銃撃でけん制する。

一瞬にして、裏門を突破した。


突破される風景を、つまらなそうに見ていたロノウェ。
彼は、この校舎への関心を失っていた。

「ふむ。外から登場しましたか・・・残念。」

校舎外の人物が正体なのか、それともあぶり出しに感づいたのか。どちらにしても、今回の作戦は失敗に終わった。得るものは何もない。

そもそも、失敗かどうかも怪しい。最初から、自分が来る必要などなかったのだ。
最後の一口を飲み終える頃、屋上にはうみねこセブンが登場していた。

「私の名前はロノウェ。ただの偵察員です。意外と早かったですね。まるで、この校舎の構造を知っているかのようだ。」

ロノウェは探りを入れる。すかさず、イエローが反応する。

「へっ。この前ガァプってヤロウが襲ってきた時に、この屋上に来たからな。」

ロノウェは、顔をしかめた。ガァプと同じ場所に陣取ってしまったとは。不覚。
どちらにせよ、ここにいる理由はもうない。

「ぷっくっく。それはそれは。あ、ご安心を。戦う気はございませんので。何しろ私に与えられた使命は『偵察』でして。私に戦闘能力はございません。」

朱志香は感づく。こいつはヤバイ。4対1でもまったく動じていない。そして、まったく隙がない。のらりくらりしている印象があるが、それは作戦なのだ。

「・・・気をつけて。そのロノウェっておっさん、相当できるよ。。」

その言葉を聞いたロノウェ。
興味の無さそうな顔を見せた。

「今の話を聞いていなかったのですか?戦う気はございませんよ。そろそろ失礼させていただきます。それでは。」

ふっと。一瞬。
たった一瞬で、全ての山羊さんが消え、ロノウェ自身も消えた。

ロノウェにとって、交戦は何のメリットもなかったのだ。

まあ、負ける事はない。だが、もし相手の一人でも生かして逃がしたら。自分の能力が知られれば、何らかの対策を取られるかも知れない。
また、自分に与えられた任務は「偵察」である。偵察は完了した。それに、うみねこセブンごときの戦力を自分で把握する気もない。そんな事は他の戦闘員がやればいい。

分かった事は「うみねこセブンはどこから来るのか分からない」ということだけだ。
もう、うみねこ学園だけに絞るわけには行かないだろう。作戦の練り直しだ。

『紗音・嘉音。後は頼みましたよ』

ロノウェは2人にテレパシーを飛ばし、思念さえも、消した。

決着はつけられなかった。だが。
たいした被害もなく、無事に乗り切ったようだ。


「ロノウェ、か・・・一体、何者だったんだろう。」


【エンディング】






おまけ。



「ふー。何はともあれ、作戦は成功したっぽいな。」

レッドが安堵の溜息をつく。
確かに。ロノウェを倒す事はできなかったが、被害も出なかった。それでいいとしなければ。

「ちょっと、最後に校舎内の安全を確認するぜ。、『イエロー・アイ』スコープ=オン!!っとくらぁ。」

体育館・別棟・校舎・運動場・・・特に変わったところはない

「・・・うん。特に問題は・・・え?」
「どうした?イエロー。」

裏門を見たとき、イエローは固まった。
身を隠すように嘉音がいたのだ。なぜ裏門に?

『僕達には、行くところがある』

先ほどの言葉が気になる。行くところでって何処だろう?
と、正門に紗音の姿を確認した。『僕達』・・・『達』?
『達』って、紗音のことか?2人でいったい何を?

いやな予感がする。紗音も、最近少し様子がおかしい。誰かのことを気にかけている感じがする。
譲治のアニキの情報によれば、2人とも同じ高校から転校してきたそうだ。
まさか・・・

「おい、イエロー。本当にどうしたんだ?」
「・・・いや、なんでもない。異常なしだぜ。」

いやいや。そんなことはないさ。あの二人は、とてもいい子達だ。それは間違いない。
きっと、山羊さんに追われて身を潜めてただけさ。

嘉音君。君は一体何者?
いい人・・・なんだよね?

《This story continues--Chapter 6.》



《追加設定》

【うみねこ学園】

右代宮金蔵の出資で作られた、小・中・高・大・院の全てを持つマンモス校。
譲治は大学院に。朱志香と戦人、嘉音・紗音は高等部(3−C)に。真里亞は初等部に通っている。
最先端技術の研究・考古学の研究から、西洋の文化まで。あらゆる方面で活躍の場を広げる注目校。

金蔵は、「右代宮学園」と名付ける予定だったが、後々に孫達が特別扱いを受けるのを防ぐためにあえて自分の名前を伏せた。

【イエロー・アイ】

右代宮朱志香である「うみねこイエロー」の新機能。
コアからの特殊な波動を利用する事で、超遠視が可能となる。動き回っての使用や、近くにあるものの確認は不得意。元々は、レッドとのコンビネーションで狙撃をするために開発された。
inserted by FC2 system