『今回予告』

 今回に敵はいつものねーちゃんや黒山羊じゃなくてでっかい亀かよ、しかも縁寿が襲われているなんて絶対負けられね! 
 しかしこいつは手強すぎだぜ、俺達の攻撃が全く通用しねぇ!
 頼む”コア”よ、俺に力を貸してくれっ!!!!

【オープニング】

 「うっふっふっふっふ、自分達の運命も知らぬ愚かな人間ども…」
 とある小さなビルの屋上から眼下を見下ろし強欲のマモンは笑う、彼女の任務は新戦力である幻想怪人をテストすることで、そのやり方は彼女に一任されている。 つまりは好き放題暴れていいと言うことである、先ほど転送準備完了という連絡があり到着しだい大暴れしてやろうと決めていた
 「…さあ、早く来なさい幻想怪人メガラ、お前の力で人間どもの悲鳴をベアトリーチェ様にお聞かせ…ん?」
 不意にマモンの周囲に影が差す、何事かと見上げてそれが何かと気がついた時にはすでに手遅れであった
 「どひゃぁぁぁあああああああああっ!!!!?」
 ドスンという落下音の次にマモンの悲鳴が響く、皮肉にもマモンは自分自身の悲鳴をベアトに聞かせることになったのだった
 「……うきゅ〜…」

 謎の二足歩行亀の出現はすぐさま金蔵の元へと伝わりうみねこセブンに出動命令が下る、たまたま近くにいた戦人と朱志香が先行する
 『…お前達の位置からでは大木奈(おおきな)公園あたりで敵と接触するはずだ、付近の住民もみな避難しているはずだしそこならば遠慮なく戦えるはずだ』
 「…了解だぜ祖父さんっ!」
 二足歩行亀は手近にある頑丈そうな物を破壊しながらゆっくりと移動している、その様子は物を破壊し自分の力を見せつけるかのようであった。 いつもと違い変な格好のねーちゃんや黒山羊達がいないのが不気味ではあるが罠ならその時はその時である
 「油断すんなよ戦人?」
 「…お前もな朱志香!」
 通信を切ると二人はさらにスピードを上げて走っていく、そのさなか戦人は嫌なことに気がつく
 (…大木奈公園? 縁寿がいつも遊びに行っているとこだ…まさか今日はいないよな…?) 
 不安を打ち消すように首をふる戦人、しかしこの後嫌な予感程的中してしまうものだということを思い知ることになる


 「……うにゅ?」
 ベンチの上で眠っていた縁寿は物音に目を覚ました、遊び疲れて横になったらいつの間にか眠っていたらしい。 まだボーっとした頭で辺りを見わましてみる、そしてとびこんできたものの姿に一気に眠気が吹き飛んだ
 「…あ…な、なに?…かめのおばけ…?」
 「キシャー…」
 身長二メートルはある巨大な亀が縁寿を見つめている、そのギロッとした目を縁寿は怖いものと直感した、ひょっとすると今噂になっている悪い人達の仲間ではないか思いあたり逃げないとと思うが身体が震えて動けなかった
 「あ…ああ…」
 「グルルゥ…」
 ゆっくりと亀が近づいてくる、恐怖で泣き出しそうになりながらそれでも縁寿は信じていた、きっと兄が…戦人が助けに来てくれることをだ、そして声が響く
 「待ちやがれ化け物っ!!! 【通常弾】装填…【ガン・イーグル】シュートっ!!!!」
 敵の姿と共に縁寿の姿を見つけた時うみねこレッドはぎょっとなった、そして彼女を守るために手にしたハンドガンのトリガーを引く、普通の拳銃と違いヒュインという変わった音なのはこの銃が火薬以外のもので作動しているということを示している
 「続けていくぜっ!! 【破魔連撃拳】!!!!」
 さらにイエローが一気に飛び込み連撃をしかける、一瞬怯んだかに見えた亀――メガラだったがその口元がニヤリと歪むとその右腕を無造作に振るった。 間一髪回避したイエローは一旦後ろへ跳び距離をとる
 「効いてないのかっ!?」
 「ああ…【ガン・イーグル】の攻撃も弾きやがった、何て奴だ!」
 先制攻撃に失敗した二人は縁寿を庇うように前に立つ
 「えん……君立てるか? 早く逃げるんだ!」
 「…あ…はい…あのもしかして……」
 「レッド! イエロー!」
 縁寿が何かを言いかけた時グリーンとピンクが走ってきた、二人共状況をすぐ理解したのか援護に入る
 「おそらく甲羅は固い、そこ以外の手足を狙うんだピンクっ!!」
 「う〜了解グリーン! さくたろ、お願いっ!!!!」
 ピンクが杖を振るうと可愛らしいライオンのぬいぐるみが現れる、そしてその身体が光ったかと思うとその姿がトレードマークの赤いマフラーはそのままに鋭い爪と牙を持つ雄々しいライオンへとと変化した、
 「うりゅ〜!!まかせてピンクっ!!」
 さくたろうはその俊敏な動きを生かしメガラの左脚にその爪の一撃を繰り出すがその固い皮膚は彼の爪を弾く、若干斬り裂けてはいるがそれだけだ
 「…甲羅だけでなく皮膚も半端じゃない!?」
 「キシャァァァアアアアアアアアアッ!!!!!」
 グリーンが驚き叫んだときメガラの口がカッと開かれて中から紅蓮の炎が吐き出される。 最初に標的になったのはさくたろうだった、なんとか回避できたものの一旦攻撃をやめ後ろに下がらざるをえなくなる
 「うりゅ〜…飛び道具付きなんて……」  
 「かたまっているとやられる! 全員散開するんだっ!!」
 グリーンの指示に全員頷くと同時に四方へ走る、そしてさくたろうがスピードを生かしメガラを撹乱しレッドの【ガン・イーグル】がそれを援護する、そして左右から間合いを詰めたイエローとグリーンが一気に技を叩きこんだ
 「【破魔一閃撃】!!!!」
 「【魔王破岩脚】!!!!」
 しかし黒山羊なら一撃必殺の攻撃もまったく効果がない、逆に無造作に振られた腕で弾き飛ばされてしった
 「「うわぁぁぁああああああっ!!!?」」
 
【アイキャッチ】

 縁寿は逃げなきゃと思いつつもレッドのことがどうしても気になりすぐには動けなかった、それはすぐにある確信へと至る。 それゆえ彼らが危機に陥れば何かしなくちゃという思いが怖くて震える彼女にその場から逃げだすという行為を拒絶させていた
 「こ…こいつ、うわぁぁぁあああああああっ!!!!」
 レッドは無駄と分かりつつも無我夢中で【ガン・イーグル】のトリガーを引く、それは初めて感じる実戦の恐怖だった、ケンカではなく命のやりとり、そして今までと違い力の差がありすぎるこの敵を前にとにかく攻撃をしなければ自分が殺されるかもしれないということに耐えられない。 その恐怖を止めたのは彼の脚にしがみついてきた少女だった
 「…おにいちゃん!」
 理屈で動いたわけではない、頭の中は真っ白で自分が何をしているのかすらよく理解していないが、それでも何かしなきゃという想いが縁寿の身体を動かす
 「お前…俺のこと…?」
 「だいじょうぶだよ、おにいちゃんはつよいもん…あんなこわいおばけにまけるはずないよね?」
 今にも泣き出しそうな顔なのにレッドを励まそうと無理やり笑顔を作っているのが分かる。 それ程先ほどのレッドの顔は怯えていたのだろう、怖くて逃げたいだろうに小さな身体で必死に耐えているのはいくらレッドでも分かる
 そんな縁寿を見て彼は気がつく、ヒーローとは常に弱者を一方的に守るために戦うものだと思っていたがそうではなくヒーローもまた誰かに支えられている、少なくとも自分はこの小さな妹に応援され信頼されている
 そして先ほどまでの恐怖が嘘のように消えているのに気がついた
 「…大丈夫だ縁寿、俺は負けない…だから下がっているんだ」
 そう言いながら縁寿の頭を撫でてあげる、縁寿はうんと頷くとゆっくりと離れていく。 それを見届けた戦人は何とか持ち堪えている様子のさくたろうと戦っているメガラを睨みつけ叫ぶ
 「俺は負けねぇっ!!! 負けらんねえんだ!! だから”コア”よ、俺に力を貸してくれ…縁寿の信頼に応えるだけの力をっ!!!!」
 その想いに答えたのか”コア”が蒼い光を発した、驚く戦人の目の前で光は収縮していき彼の左手の中でひとつの形となる。 それが何でどうすれば良いかを戦人は瞬時に理解した、素早くそれを【ガン・イーグル】に装填し構える
 「くたばれ亀の化け物っ!! 必殺【蒼き幻想砕き(ブルー・ファントムブレイカー)】!!!!!」
 銃口から放たれた蒼い閃光は一直線にメガラを撃ち抜く、物理的な防御など意味のない幻想を砕くその閃光を受けたメガラは断末魔の叫びとともに粒子となって砕け散った…
 
 
 その戦いを眺めていた女性がいた、空中に浮かんでいるところからして人間ではない
 「…あれがルシファー達を退けた少年達…メガラを倒すとは若いのにやるものですねぇ…」
 おっとりした口調で感心したように言うこの女性はワルギリア、ファントムの一員でありメガラを送り込んだ張本人だ。 一向にマモンからの報告がないため様子を見に来たのだ、見つからないよう距離があるためどのような会話が交わされた分からないが女の子を守るために底力を発揮したということだけは分かる、敵ながら大したものと本気で思う
 「…それにしてもマモンはどうしたのでしょうか? ちゃんとマモンのいる場所にメガラを転送したはずなんですが…?」
 頭の上に大きなクエスチョンマークを浮かべて首を傾げる、その転送魔法がピンポイント過ぎてマモンが下敷きになりいまだに気絶中などとは想像できないワルギリアだった
 

 戦人達はそろって帰路に着く、縁寿は戦人に背負われ嬉しそうだがその表情にはどこか影がある
 「…なあ、どうしてレッドが俺だって分かったんだ?」
 「うん?…えんじぇがおにいちゃんのことわからないはずないよ? だいすきなおにいちゃんだもん!」
 そう言われると戦人としても照れくさかった、顔が少し赤くなる
 「…でも、おにいちゃんだけかとおもったら…まさかみんなしてせいぎのみかたでびっくりだよぉ…」
 「「「「…へっ?」」」」
 言葉の意味そのままなら、戦人はすぐに分かったが他の面子は正体を明かすまで気がつかなかったということになる。 一同は疑惑のこもった視線を縁寿に向けるが当の本人はそんなことお構いなしに戦人にしがみついて嬉しそうにしていた
 ((((…縁寿って…まさかブラコンっ!!?))))
 この瞬間間違いなく全員(縁寿・戦人以外)の気持ちがひとつになっていたのだった 

【エンディング】


《This story continues--Chapter 4.》



 【ガン・イーグル】:レッド専用に開発された試作型の魔力式拳銃、威力は使用者の魔力(コアの力)で若干上下するが基本的に安定しているのが強みであり欠点でもある。 今回は【通常弾】を使用したが弾丸の換装でさまざまな効果を発揮する
 
 【蒼き幻想砕き】:”コア”の力を圧縮し弾丸の形となったもの、物理的な防御を無視し幻想側の住人を攻撃する力がある ※魔法的な防御は有効

 さくたろう戦闘形態:真里亞の”コア”の力を受け変身したさくたろう、戦闘力はマスターである真里亞がどれだけ”コア”の力を引き出せるかに比例する

 幻想怪人メガラ:身長二メートル程の巨大な二足歩行亀、頑丈な身体と口から吐く炎を武器に戦う。 性格は凶悪で凶暴…ではなくとにかく暴れて自分の力を見せたいだけの単純でおバカな奴である

inserted by FC2 system